経済と世相

日本病

金子勝さん(経済学者)と児玉竜彦さん(医学者)が『日本病』(岩波新書)という本を出した。以前お二人は『逆システム学』(2004、岩波新書)を著し、経済学に生物学の手法を適合させようという野心的な試みをされた。http://d.hatena.ne.jp/snozue/20…

『雇用身分社会』

『雇用身分社会』(岩波新書、盛岡孝二著、2015年10月)を大学図書館の棚で見つけ、パラパラと立ち読みしました。筆者は関西大学名誉教授。企業社会論を専門とし、大阪過労死問題連絡会会長。 終章「まともな働き方の実現にむけて」が目を惹き、借りて読んで…

ケインズの逆襲・ハイエクの慧眼

「アベノミクス以外に道はない!」、安倍首相は力説します。経済学的にみて、本当にこの道しかないのか、経済学者の意見を知りたいと新刊書を探してみました。 「ケインズの逆襲・ハイエクの慧眼」(松尾匡著、PHP新書201411月刊)を丸善で見つけ購入しま…

『経済学の考え方』 

宇沢弘文さんが9月18日世を去った。改めてどんな主張をされた方か、著書を読んでみたいと、図書館から、岩波新書『経済学の考え方』(1989年刊)を借りて読みました。 一言でいえば、宇沢さんの「私選経済学史」でした。 もっとも筆者は「あとがき」で『…

『アベノミクスの終焉』

(服部茂幸著、2014年8月、岩波新書)なる本を読みました。 「アベノミクスを支える経済学的理論も実証的データも存在しない」というのが、この本の湯町です。この本はアベノミクスを総括しているのですが、アベノミクスだけでなく、90年代以降の日本…

『日本劣化論』

(笠井潔、白井聡著、ちくま新書、2014年7月刊) を読みました。著者の笠井さんは、小説家(「オイデイプス症候群」)で評論家(「8.15と3.11」、「永続配線論」など)。だそうです。笠井さんの経歴に惹かれて読んでみました。 何を指して『劣化』というのか…

(金子勝・神野直彦著、2012年6月NHK新書)をタイトルに惹かれて読みました。 金子・神野両エコノミストの対談の本です。「失われた10年」が『20年』になり、『30年』になりそうな日本経済に何が起こっているのか、大摑みに分析できています。 第2章…

『「失敗」の経済政策史]』

『「失敗」の経済政策史』(川北隆雄著、講談社現代新書、14年6月)を読みました。 著者は、東京新聞を経て専修大学講師。著書に「国売りたもうこと、なかれ」、「官僚たちの縄張り」(新潮社)など。 日本経済の戦後史を敗戦後の傾斜生産から最近のアベノミ…

 『変わった世界 変わらない日本』

(野口由紀雄著、講談社現代新書2014年4月刊)は、経済に関する野口理論の簡潔な解説でした。 まず、現在の世界経済、リーマン・ショックの背景から話が始まる。 アメリカの金利が日本より高くても、為替レートが円高になれば、為替差損が金利収入を帳消し…

『金融緩和の罠』(集英社新書、2013年4月刊)は知的刺激に溢れた本でした。哲学者の菅野稔人さんが3人のエコノミスト(藻谷浩介、河野竜太郎、小野善康)にインタヴューして、今日の経済学の問題を浮き彫りにするという構成の本です。 3人の共通点は、「…

カウントダウン・メルトダウン

『カウントダウン・メルトダウン(下)』(舟橋洋一著、文芸春秋12年12月刊)を図書館で借りてきて読みました。なぜ下巻だけ読んだのかというと、3.11の際に米軍がどう考えどう行動したかを知りたかったからです。(上巻は全電源喪失から自衛隊の放水…

8.15と3.11

日本が原発を国策とした背景には、冷戦や潜在的核大国たらんとする政治家の思惑があったことは否定できないのではないかと、あらためて参考文献を探してみました。見つけたのが、『8.15と3.11』(笠井潔著、2012年12月刊、NHK出版新書)でした。 …

[]福島第一原発 真相と展望

『福島第一原発 真相と展望』(アーニー・ガンダーセン著、集英社新書、2012年2月刊)を読みました。著者は、1949年生まれの原子力技術者、原子炉の設計、建設、運用、廃炉に携わったという。 読んでみようと思ったのは、原発事故に関する政府や東電の発表は…

日本の転機

ロナルド・ドーアさんが新刊を出した。『日本の転機――米中のハザマでどう生き残るか』(ちくま新書、12年11月刊)です。 ドーアさんの著書については、1年ほど前に紹介しています。 http://d.hatena.ne.jp/snozue/20111120 この本を著してから一年。原…

定数是正の妙案

衆院の定数是正は、とりあえず0増5減の法案が成立したが、区割りが出来ていないので、今回の選挙は違憲状態で行われることになる。人口は変動するから、次回の選挙が0増5減で行われたとしても、違憲状態がなくなっているかどうかは分らない。 そこで、い…

夢の原子力

『夢の原子力』(吉見俊也著、12年8月ちくま新書)を読みました。 まず、序章から著者の主張を読み取ります。 【大阪万博には、日本原子力発電が万博開催にあわせて運転を始めた敦賀原発一号炉からの送電がなされた。ちなみにこの一号炉を製造したのはG…

「脱原発」成長論

『「脱原発」成長論』(金子勝著、2011年8月刊、ちくま書房) この本のポイント2箇所を以下に引用します。 【たとえ低線量であっても、内部被爆は長く深刻な影響を残す。チェリノブイリ原発事故後、現地に入った医師たちによって、ヨウ素131は小児甲状…

通貨を考える

『通貨を考える』(中北徹著、ちくま新書、12年6月刊)を読みました。 読もうと思ったのは、三つのことを知りたかったからです。 ユーロ危機の問題から通貨の統一がもたらす国民経済への影響、次に元と円の直接交換の意味についてです。最後に、ハイエク…

TPP亡国論

『TPP亡国論』(中野剛史著、11年3月集英社新書)を読みました。この本の出た時、書評で、出たことを知っていましたが、「タイトルがあまりに通俗的だ」と読む気になれなかった。それが「レジーム・チェンジ」、「グローバル恐慌の真相」の2冊を読んで、…

福島原発の真実 

佐藤栄佐久氏の本2冊を読みました。 「福島原発の真実」(平凡社新書、11年6月刊)と「知事抹殺」(平凡社、09年9月刊)です。佐藤氏の経歴は、1939年福島県郡山市の生まれ。83年参議院議員、大蔵政務次官を経て88年福島県知事。第5期、06…

グローバル恐慌の真相

株がバブル後の安値をつけたと報道されています。米国の失業率が悪化、ギリシャ、スペインの金融不安のためらしい。世界同時不況はありうるだろうか。 グローバル不況はやってくるのでしょうか。 「グローバル恐慌の真相」という本を読みました。 若い気鋭の…

レジーム・チェンジ

『レジーム・チェンジ』(NHK新書、12.03・30刊行)という本を読みました。筆者は、中野剛志・京都大大学院工学研究科准教授、経産省課長を経て現職です。 この本は、デフレと新自由主義とEU問題について、面白い仮説を提起しています。 筆者の提示する…

『震災復興 欺瞞の構図』

原田泰さんの新刊を本屋の棚に見つけました。 『震災復興 欺瞞の構図』(新潮新書、12年3月刊)です。「欺瞞の構図」って?まずは序論(前書き)を見ていきます。 【東日本の復興のためには19~23兆円の予算が必要で、それを賄う10.5兆円の増税が…

クラウドの未来

『クラウドの未来』(小池良次著、12年1月刊、講談社新書)を大学図書館の新着本の棚にみつけました。 著者はサンフランシスコ郊外に在住。米国に居て実感ずる「未来のクラウド」を論じています。 私は「クラウド」について、個人的なデータを、プロバイ…

震災後

『震災後』(副題が「そろそろ未来の話をしようか」)を読みました。作者は、福井晴敏、11年11月(小学館)の刊行です。著者は『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』などの作品で知られる。推理小説作家。 週刊誌に昨年の6月から11月にかけて連載した小…

さよなら!僕らのソニー

『さよなら!僕らのソニー』(立石泰則著、文春新書、11年11月刊』を読みました。雑誌の書評欄で取り上げられていたので、読んでみようと、先月中旬書店に行ったのですが、売り切れとのことでした。数日前、書店をのぞいたら、二版が出ていました。 ソニ…

バブルの興亡

徳川家広という人がいる。世が世ならば、19代徳川将軍さまだそうです。1965年生まれで慶応大学経済学部卒、ミシガン大学経済学修士、コロンビヤ大学政治学修士。翻訳家として『ソロスは警告する』なるベストセラーがある。この徳川さん、『バブルの興亡』…

金融が乗っ取る世界経済

『金融が乗っ取る世界経済』(ロナルド・ドーア著、中公新書11年10月刊)を読みました。「あとがき」の問題提起が挑戦的です。 【本書で描いた日本経済のアングロサクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国であり、日本と安全保障条約を結んでそ…

原発と権力

『原発と権力』(山岡淳一郎著、11年9月刊ちくま新書)は考えさせられる本でした。以下、その終章から。 【日本ではほとんど議論されていないけれど、中国、米国、インド、フランスなどは今後、間違いなく「トリウム原子力」の開発に力を入れるとみられる…

『原子力神話からの開放』

(高木仁三郎著、講談社α文庫10年5月刊) 著者の高木さんは、ご存知の方も多いと思いますが、核化学の専門家(1938〜2000)で、原子力資料情報室を設立、原発とりわけプルトニューム利用の危険性について、警告を発し続けた方です。 この本は2000年8…