平成経済20年史

「平成経済20年史」(幻冬舎新書)という本が出ています。著者は、紺谷典子さん。TVでよく顔を見るからご存知の方も多いでしょう。日本証券経済研究所の出だから、株式市場に詳しい。この本、帯の文句が良い。『「改革」するたび、生活は悪化した。』

 どんな本かは、「はじめに(前書き」)を読むだけで分かる。以下、これを紹介。

【バブル破裂後の経済低迷は、あまりにも長すぎる。・・・立ち上がろうとしては叩きのめされ、また立ち上がろうとしては叩きのめされ、・・・叩いたのは日銀であり、財務省であり、米国金融であった】

小泉改革が、景気回復をもたらしたというのは、嘘である。・・・雇用者所得が低下を続ける景気回復などあるものか。】

【年金改革も医療保険改革も、保険料の値上げと、年金の削減、医療の自己負担の増加でしかなかった。・・・財政危機が実態以上に、大げさに語られてきたからである。しかし、年金や医療の財政危機は、事実でなかった。】

社会保障の削減はすでに限度を超している。その結果、世界一と評価されたこともある日本の医療はは、もはや崩壊寸前である。

小泉内閣の「官から民へ」は行政責任の放棄であり、「中央から地方へ」移行されたのは財務負担だけだった。「郵政民営化」は、保険市場への参入をめざす米国政府の要望である。小泉首相の持論と一致したのは、米国にとっては幸運でも、国民にとっては不運だった。】

サブプライム・ローン問題は、金融改革が幻想だったことを明らかにしている。】

以上は前書きの“さわり”です。紺谷典子(ふみこ)さんって、こんなに歯に衣着せない物言いをする人だとは思いませんでした。文学部(早稲田)出身のエコノミストですから、見方がユニークなのかな?結論に飛びましょう。

『平成の20年は、後世に詫びるべき20年であったとしか思えないのだ』

平成の20年、政府は「改革」「改革」と唱えてきた。しかし「改革」すればするほど、日本経済は悪化した。もし「改革」をやっていなかったら、日本人の所得は今の2倍を越えていた、と彼女は言う。日本以外の国々は、この20年間で、2倍以上の経済成長をしている。日本だけがゼロ成長、これは政策の失敗以外の何者でもない。しかも、この失敗続きの政権に、国民は衆院の三分の二を与えたのだ。後世に詫びるべきと説く所以です。

どうして、日本政府は政策を誤ったか?「改革」を主導したのが財務(大蔵)省だったから、と彼女は言う。

【予算配分の権限を実質的に握り、それによって霞ヶ関に君臨してきた財務省にとって、予算配分の自由度の拡大は、権限の拡大でもある。国民生活を守る社会保障や公共事業は、彼らにとって大きすぎる予算シェアにしか見えなかったかもしれない。】

 【(大蔵省の財政構造改革は)軽い風邪ならともかく、デフレ経済は未曾有の大不況、大病なのである。それなのに薬を飲ませない。必要な景気対策を行わず、病んだ病人にジョギングを迫ったも同然だった】

景気は、回復しようとする度に、叩きのめされたと、彼女は言う。

 この書で述べている彼女の主張は、概ね正しいと思う。しかし、唯一小渕政権の経済政策、及び金利ゼロ政策を、無条件で評価している点に疑問が残る。

しかし、竹中大臣の銀行潰しの経緯は、迫力ある記述です。これについて紹介したいのですが、長くなりますので、別に述べたいと思います。

 平成の20年、日本経済に何が起きていたかを検証したい人には、お勧めの書です。