この国のかたち 5

 『寺島実郎の発言』から「構造改革」に関連する戦略を抜書きしました。
【日本という国は不思議な国で、国民経済が二極分化している。競争条件が入り込んでいる領域については、価格体系が国際的に見ても妥当な水準に下がり始めてい ・・・しかし、競争条件が入り込まない公的規制領域においては、驚くほど高い価格 体系が固定化している。例えば、高速道路料金・・・】道路公団民営化が必要なわけですね。
 また【産業の集中した都市で集まった税金を地方(農村)に配分するというシステムが常態化した。その具体的回路の一つが「公共投資」の配分であった。】
 財源の地方への分与がないと地方分権は実を伴わないでしょう。寺島さんは【何を価値基準に分配を行うか,未来社会の設計には不可欠の要素である。】と言います。

 価値基準の設計には、戦略が必要とされるのだが,近年の日本の戦略性の欠如について【無線電信についても明治の先人は卓抜な対応を示している。無線電信がマルコーニによって発明されたのは、1895年であったが、その翌年には逓信省は早くも研究に着手している。1900年のパリ万博の技術的目玉は無線電信であったが、当時ロンドン駐在武官だった「日本海海戦の天才参謀・秋山真之」らの海軍軍人が注目 ・・・わずか4年後の日露戦争時には、日本海軍はすでに主力艦から駆逐艦にまで無線電信を装備しており、「将校37名,下士官150名が無線電信のために配属されていた」という。
 驚いたことに、日本の「行革」の結論は、郵政省を総務省のなかに入れ,この国の情報通信戦略は「総務省」を中心として展開するというのである。】
 日本は直面する構造的変化を踏まえた戦略を持たねばならない。 
【例えば高齢化について、日本では65歳以上の人口の比率が10年以内に2割を超す時代が到来することや、15歳から64歳までの生産人口に対する高齢者の比率が三分の一を超すことが、日本社会の活力を失わせる暗い展望として語られることが多い。しかし、それは正しくない。高齢者を「社会的負担」と考えるか「社会的資産」と考えるかによって未来展望はまるで座標転換する。・・・例えば,定年退職した人から、小・中学校の先生として教壇に立つ人をリクルートする仕組みをつくることができれば、次世代に先行世代の体験を伝達する回路としても意義がある・・ また、「高齢者が高齢者を介護する」という発想で、福祉の現場に高齢者の参加を促す受け皿としての非営利団体を多様に活用していけば、福祉の現場の活力は様変わりしていくであろう。】