2006-01-01から1年間の記事一覧

2006年の10冊

さて、本年の私の読書を振り返り、ベスト10を選びました。 今年は新書版にユニークな本が多かった。そこで新書版からベスト6を選び、単行本からは4冊にしました。1.ウェブ進化論 梅田望夫著 ちくま新書 ネットの向こう側、こちら側という考え方、大いに裨…

続・無思想の発見

養老孟司さんの「無思想の発見」に、もう一つ、脳の働きと言葉について、興味深い記述がありました。 【目の前にリンゴ2個とナシ2個があるとする。感覚世界では、それはただちに「違うものが四つ」として認識される。・・・ところが「同じ」という世界、言…

無思想の発見

昨年12月に出て買った本を、今読んでいます。『無思想の発見』(ちくま新書)養老孟司さんの本、本人が「あとがき」に【この本は売れない。売れないと思う】と書いているように、養老さんの本にしては珍しくあまり売れなかった。しかし、読んで見て、これ…

藤原先生の卓説

いや実に痛快な文でした。藤原正彦さん、文藝春秋新年号の巻頭論文「国家の堕落 驕れる経済人よ、猛省せよ」です。以下、そのさわりを紹介しますと、 【市場原理を至上のものとする新自由主義は、決して学問的に確立されたものではない。ハイエクやフリード…

外国映画の主題歌になったナツメロ

賛美歌312番と唱歌「冬の星座」の関係を追及しているうちに、久世光彦さんの「マイラストソング」に嵌ってしまい、ついに1〜5巻の全部を一気に読み終わりました。 いや、面白かった。これだけ歌謡について語りうる人が居たんですね。14年も連載したの…

よく似た歌

賛美歌312番、久世光彦の「マイラストソング・第5巻」を見たが載っていない。ではと、第1巻の「マイラストソング・あなたは最後に何を聴きたいか」を鶴舞中央図書館の書庫から取り寄せてもらった。95年4月10日の刊行です。(このエッセイは平成4年…

よく似た歌

メガバンクの搾取

最近、メガバンクが空前の利益を上げているのに、法人税を一銭も払わないということが話題になっています。野口悠紀雄さんの新著、『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社)に面白い指摘がありました。『「黒字亡国論」という誤解』の章を引用しま…

春歌と「地獄の顔」

以下、久世さんの文章です。 【三つとせ 醜いところに×××××すっても剃ってもすっても剃っても××××× 四つとせ 余計なところに×××××すっても剃ってもすっても剃っても××××× つい最近、森繁さんとその後の文句を思い出そうと懸命になったが、二人とも記憶力が減…

北へ

もう一度、久世著「マイラストソング」(第2巻)の話題です。大分前の話しですが、A/SASAKI様から、広島出身の演歌歌手竹川美子さんを紹介頂きました。作曲家・叶弦大の門下とお聞きしました。その叶弦大の話。 日本の歌は、北へ帰りたがる。「北帰行」、「…

賛美歌から猥歌

賛美歌312番が何故「冬の星座」に酷似しているのか、久世光彦「マイラストソング」を読んでみようと、図書館に立ち寄りました。 調べてみると、この本は久世さんが雑誌「諸君」に十数年連載していた歌に関するエッセイをまとめたもので、既に5巻出ていて「…

悪夢のサイクル

評論家の内橋克人さんが新刊を出したと言うので早速買ってきました。『悪夢のサイクル』(文藝春秋、¥1500)です。経済に関する本というものは、なかなかすらすらとは読めないのですが、この本は誠に読み易く、一晩で一気に読了しました。 バブルの発生…

藤沢周平の世界

友人の評判を聞いて「藤沢周平の世界 創刊号」を買ってきて通読しました。 藤沢周平の文章って、とてもリズムが良いのです。 私がリズムが良いというのは、文章を声に出して読む時、息を次ぎたいポイントにくると、必ずそこに句読点がある。作者のリズムと自…

『格差社会』

橘木俊詔さんの本、「家計からみる日本経済」に続いて「格差社会」(岩波新書)を読みました。「これはいいな」と思ったこと、全く同感だなと思ったことを記します。1.社会科学の論文は、こう書くべきだと、以下の点に感服しました。 (卒論にとりかかる前…

一万年の天皇

『一万年の天皇』(上田篤著、文春新書)を読みました。 天皇制tとい制度は、上田さんの説によると、天智・天武・持統の時代に完成したそうです。つまり、約1300年前。しかし、1300年前革命があって突然天皇ができたというわけではない。それ以前か…

家計からみる日本経済

橘木俊詔『格差社会』が面白いと聞き、橘木さんてどういう人?としらべると98年に「日本の経済格差」という本を著し、格差問題に最初の発言をした人らしい。著書のリストをみると04年に「家計からみる日本経済」を岩波新書から出している。この本は面白…

文脈力

『「頭がいい」とは、文脈力である。』(斎藤孝著、角川書店、04年12月刊)という風変わりな題の本を読みました。 この風変わりな書名が気に入ったのです。 以前、「国語が小学校の教科で最重要!」と書いたことがあります。その折、「何故、国語が最重…

タラとレバ

「”タラ”とか”レバ”は厳禁だ」と、若い頃、言い聞かされました。「こうしタラ良いだろう」とか「こうすレバ良いだろう」と言うな!そう思ったら、言う前にやってみろ!というのです。 生産現場で厳禁の”タラ””レバ”に、日本歴史の世界で挑戦してみようという…

ファインマンさん

図書館の書棚を眺めていたら『ファインマンさんベストエッセイ』(岩波)という本を見つけ出した。 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(岩波現代文庫)」という書名は、聞いたことがあるな、と手に取ってみたら、01年3月の刊行で一寸古いが面白そうな…

失われた10年とは?

『「失われた10年」は乗り越えられたか?』(下川浩一著、中公新書)という 本、題名に惹かれて買ってきました。著者は、日米両国の自動車産業の研究者として著名です。 読んでいて一番面白かった記事は、企業の戦略について説明した次のくだり。 【かつて…

天皇の官僚

外務大臣にも知らせず国連分担金の滞納をする!まさに”天皇の官僚”は外務省において健在でした。”天皇の軍隊”は敗戦で消滅しましたが、”天皇の官僚”は今も生き残った。 ”天皇の官僚”とは、(小生の定義では) ①国民にも政府にも知らせず、自分たちで決めたこ…

この話、知ってます?

「日本の外交は国民に何を隠しているのか」(河辺一郎(愛知大学教授)著、集英社新書)という本を読んで「えっ、そんなことあったの?」と仰天しました。 「国連分担金を日本がいつも滞納している」という話です。アメリカが、国連の決めることが気に入らな…

血圧の話

血圧について、かねてから疑問に思っていることがあります。 上が140、下が90という基準です。 血圧は、血管を流れる血液の抵抗が大きければ大きくなる。従って、血管の柔らかい若い者と、年齢を経て血管のしなやかさも失われている老人とは、標準とす…

「節度の経済学」の時代

内橋克人著「<節度の経済学>の時代」(朝日文庫)なる本をよみました。どんな本かを、同書に載っていた二つのエピソードを抜書きして、紹介しましょう。 一寸旧聞ですが、旧長銀の話です。アメリカの投資会社はいくらで買い取ったか? 【10億円(政府が…

補論・あの戦争は何だったのか

7月20日の夕刊は、昭和天皇が靖国参拝中止の理由を元宮内庁長官がメモした資料が見つかったと、大きく報道していた。日経朝刊の特種を各紙が追随していました。 「松岡や白取まで合祀された」と嘆いてみえたと言う。日独伊三国軍事同盟を推進した当時の松…

馬上少年過

プールの帰りに図書館をのぞくと、新刊の棚に「司馬遼太郎短編全集12」があった。以前読んだ短編も、読み直してみようと借りてきました。 巻頭に「馬上少年過ぐ」がありました。昭和43年の作で、40年近く前に読んでいますが、あらためて作者の「小説作…

昭和史(戦後編)

半藤一利著『昭和史 戦後編』(文芸春秋刊、¥1600+T) を読みました。これって、半藤さんの講談「戦後史」ですね。 しかし、自分の子供の頃の政治の動きはこうであったか、と納得させられる本です。 以下、そのさわりの一部。 【内務省が中心となり、連合軍…

中西教授の英語教育論

K様から、文藝春秋のコピーを頂きました。中西輝政京大教授の「小学生に英語教育は必要か?」でした。 この問題について、私が最も問題だと考えていることは、「幼時の外国語教育が、子供の脳の形成にどのような影響を与えるのか?」について、脳研究者は色…

米原万里さんの書評

このところ同年代の有名人の訃報が続く。田村高広、岡田真澄、吉行理恵、今村昌平、そして米原万里。自ずと自分の年齢と寿命を考えることになります。 先日、寿命というものは健康寿命が、真の寿命だと私は思っています。平均が72歳だそうですが、平均とい…

景気とは何だろうか

岩波新書で『景気とは何だろうか』(山谷悠紀夫神戸大学教授著)という本、一年ほど前に読んだ本です。卒論の構想を考えようと、もう一度読み直してみました。「これは、素晴らしい!」と再認識。一年前の感想文を再録することにしました。 日頃,政治家や学…