2011-01-01から1年間の記事一覧

バブルの興亡

徳川家広という人がいる。世が世ならば、19代徳川将軍さまだそうです。1965年生まれで慶応大学経済学部卒、ミシガン大学経済学修士、コロンビヤ大学政治学修士。翻訳家として『ソロスは警告する』なるベストセラーがある。この徳川さん、『バブルの興亡』…

今年の10冊

年末が迫り、各新聞の書評欄が、識者の「今年の3冊」などを載せています。そこで、少し欲張って「今年読んだ10冊」を下記します。●脳はなぜ「心」を作ったか 前野隆司著、ちくま文庫です。 http://d.hatena.ne.jp/snozue/20110201/●『ヒトラーとケインズ…

クラウド「超」仕事法

『クラウド「超」仕事法』(野口悠紀雄著、講談社2011/11月刊行)を読んでみました。 「クラウド」という言葉は、大分前に紹介したことがあると思います。データ(ソフトも)を自分のパソコンのハードデイスクでなく、グーグルやヤフーなどIT企業のコンピ…

ラーメンと愛国

『ラーメンと愛国』(速水健朗著、講談社新書)という本が新聞や雑誌の書評欄で話題になっていますので、大学図書館で借りてきて読みました。 一言で言うと、「ラーメンに関わる社会現象学」といった本でしたが、印象に残ったエピソードを最初に紹介します。…

宇宙は本当にひとつなのか

『宇宙は本当に一つなのか』(村山斉著、講談社新書、11年7月刊)を読んでみました。「ニュートリノが光より早かった」という実験が話題になり、宇宙科学最先端の話題を知りたくなったのです。「暗黒物質」、「暗黒エネルギー」が興味深々でした。 まずは…

金融が乗っ取る世界経済

『金融が乗っ取る世界経済』(ロナルド・ドーア著、中公新書11年10月刊)を読みました。「あとがき」の問題提起が挑戦的です。 【本書で描いた日本経済のアングロサクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国であり、日本と安全保障条約を結んでそ…

ハチはなぜ大量死したのか

『ハチはなぜ大量死したのか』(ローワン・ジェイコブセン著、中里京子訳)という本を文庫版(文春文庫、11年7月刊)で読みました。 一読して感じました。「これはレイチェル・カーソンの「沈黙の春」(下記URL)のミツバチ篇だナ」。 http://ja.wikipedi…

田中角栄 封じられた資源戦略

「原発と権力」で、著者山岡淳一郎さんを紹介しましたが、この著者の発想法の依ってきたる処を知りたくて、著書を調べてみました。2009年刊行の「田中角栄 封じられた資源戦略」があることを知り、副題の「石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い」に惹か…

「通貨」を知れば世界が読める

円ドル相場が75円台を付けています。「1ドルは50円になる」と述べる浜・同志社大学教授の見解を、彼女の新著(『「通貨」を知れば世界が読める』(浜矩子著、PHP新書、11年6月刊))で読みました。以下、面白いな!と感じたことを抜書き。(カッ…

原発と権力

『原発と権力』(山岡淳一郎著、11年9月刊ちくま新書)は考えさせられる本でした。以下、その終章から。 【日本ではほとんど議論されていないけれど、中国、米国、インド、フランスなどは今後、間違いなく「トリウム原子力」の開発に力を入れるとみられる…

1970年体制の終焉

『1970年体制の終焉』という面白い題名の本を読みました。著者は、原田泰さん(東洋経済新報、98年10月刊)です。 この本の意図を、最初の章でこう説明している。 【戦後経済の「過ち」を説明する理論として、私たちはすでに1940年体制論という理論を持って…

日本の失われた10年

『日本の失われた10年』(原田泰著、日経新聞99年12月刊)という本を読みました。 今日では「失われた20年」というべきでしょうが、99年に出た本ですから「失われた10年」になっています。でも読了してみて、著者の主張は概ね今日でも妥当である。つまり、著…

日米関係の経済史

『日米関係の経済史』という原田泰さんの少し古い本(ちくま新書、95年3月刊)を読みました。最近、原田さんの本を集めて読んでいるのです。 黒船来航から、バブル崩壊までの日米関係を経済という切り口で解析した内容です。 面白い話題が満載ですが、そ…

経済学を知らないエコノミストたち

「経済学を知らないエコノミストたち」(野口旭著日本評論社、2002年6月刊)を読みました。90年代以降、日本経済は継続するデフレに悩んでいます。「失われた10年」とか「失われた20年」といわれています。 この本は2002年の刊行(00年1月から02年…

大災害の経済学

『大災害の経済学』(林敏彦著、11年9月刊、PHP新書)を読みました。 著者の林さんは、現在同志社大学教授ですが、昨年3月まで放送大学教授。小生の大学卒論の審査で査読をしていただき、大学院では1年間、修士論文の指導を頂きました。 神戸在住の…

奇妙な経済学を語る人びと

地方分権についても、『自分の金』資本主義であるべきと説く。 日本はもっと地方分権すべきだという。しかし、日本の地方分権論はヨーロッパの地方分権論とはかなり異なる。ヨーロッパの地方分権論は、豊かな地域が貧しい地域に補助金を払うのはごめんだとい…

奇妙な経済学を語る人びと

人口が減っても、一人当たり生産性が上昇すれば問題はない。少子化問題についてこう述べる。 『自由な市場』論からいうと、「子どもを増やすかどうか」は、あくまで国民各自の判断によるべきだ。その判断に、制度がバイアスをかけるのなら、制度の改善を行う…

奇妙な経済学を語る人びと

『奇妙な経済学を語る人びと』(原田泰著、日経新聞03年8月刊)。これは、これから経済学を勉強しようという人に最適だと思いました。 筆者は『自由な市場』を信奉する。市場が暴走すると言われることがあるが、暴走するのは、資本主義が「他人の金」資本…

世界経済同時危機

「世界経済同時危機」(原田泰著、09年2月、日経新聞)を読みました。 著者は、「デフレの原因はマネーサプライの減少にある」とかねてから主張している。リーマンショックからの世界同時不況についても、この観点から説明できると、近年の経済データを引…

デフレは何故怖いのか

『デフレは何故怖いのか』(原田泰著、04年10月文春新書)を読みました。 著者は、第1章から第4章で、デフレ現象を貨幣数量理論で説明しようとする。 デフレとは、継続的に物価の下落する減少である。物価と貨幣量の関係を見ると、 物価=貨幣の流通速…

『原子力神話からの開放』

(高木仁三郎著、講談社α文庫10年5月刊) 著者の高木さんは、ご存知の方も多いと思いますが、核化学の専門家(1938〜2000)で、原子力資料情報室を設立、原発とりわけプルトニューム利用の危険性について、警告を発し続けた方です。 この本は2000年8…

日本経済復活まで

『日本経済復活まで』(竹森俊平著、中央公論新社、11年5月刊)を読む。 書評欄で、「(震災)復活後の日本は輸出産業が中心になると説く」とありました。私は、「輸出産業中心の日本経済では未来は開かれない」と思っていますので、著者の論拠に興味を持…

日本国の原則

『戦時中の統制経済が戦後にも生き残り、高度成長を支えたが、日本のキャッチアップ過程が終わるとともに、むしろ日本経済の桎梏になっていった』という有名な論がある。 この論に対して面白い反論を見つけました。『1940年体制は確かに戦後まで生き残っ…

『半島を出よ』

芥川賞(76年)作家の村上龍が2005年に発表し、当時、毎日出版文化賞、野間文藝賞を受賞して、評判になった作品です。 偶々機会を逸して読んでいなかったのですが、今回の原発事故への政府の対応を見ていて、非常時での政府の対応について村上さんの見解を知…

なぜ日本経済はうまくいかないか(原田泰)

自由経済を信奉する著者は、「日本経済の失われた20年」をどう評価するか。 『日本だけでバブル崩壊後の不況がひどかったのは、日本以外ではバブル崩壊後デフレにならなかったのに、日本ではデフレになったことにある。日本以外の国はバブル崩壊後、果敢な…

「資本主義はどこへ向かうのか」

「資本主義はどこへ向かうのか」(西部忠著、11年2月刊、NHKブックス)を読みました。私が最も関心を持ったのは、筆者の「資本主義と貨幣」についての論考。市場をインターネットに比しているところが面白い。 【(ハイエクの市場観について)人間の脳が…

1ドル50円時代を生き抜く日本経済

『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』(浜矩子著、朝日新聞出版、11年1月刊)という本を衝動買いしました。 歴史的にみると、ドルは世界の基軸通貨の地位を去りつつあり、次にくる時代は機軸通貨なき時代だ、というのが筆者の世界経済観のようです。以下、…

誰が小沢一郎を殺すのか

『誰が小沢一郎を殺すのか』(カレル・ヴァン・ウオルフレン著、角川書店11年3月刊)というセンセーシヨナルな題の本を読みました。大震災のニュースで、いまや誰も小沢問題など気にする人もなくなったようですが、この本は面白い。読んで感心するのは、…

40歳からの知的生産術

『40歳からの知的生産術』(谷岡一郎著、11年1月刊ちくま新書)を読みました。 何故この本を読んだのかというと、図書館の書棚で見つけて、パラパラと序文のページを見ると、時間をどう管理するかを書いている。「知的生産」について書かれた本は多いが…

ジパング島発見記

『ジパング島発見記』(山本兼一著、集英社09年7月刊)という小説を読みました。著者は、話題になった「利休にたずねよ」(第140回直木賞)で有名になりましたが、これも同様に面白い趣向になっています。即ち、章毎に語り手が変わって、15〜16世…