経済学ノート

『資本主義の極意』

(佐藤優著、NHK新書、16年1月刊) マルクスの「資本論」を通読したいと考えていますが、簡単に通読できる代物ではないので、要点を新書本程度の容量で解説してくれる本はないかとかねてから探していました。恰好の書物を見つけました。それがこの本で…

東谷 暁さんの新刊

「経済学者の栄光と挫折」(2013年4月朝日新書)を読みました。 東谷さんの本は、以前「エコノミストを格付けする(09年9月)」を読んだことがあります。 金子勝、竹中平蔵、リチャード・ク―など著名なエコノミストを縦横無尽に論じていました。 http://d…

経済学者の集団発狂

「 経済学者の集団発狂」という面白いテーマの論文が、雑誌「新潮45」5月号に掲載されていました。著者は内山節さん。内山さんは1950年生まれの哲学者、大学を卒業せず、独学で哲学を学んだというユニークな経歴の持ち主です。 http://ja.wikipedia.org/w…

国力とは何か

「国力とは何か」(中野剛志著、11年7月講談社新書)を読みました。 何故この本を読もうと思ったのか、先に野口悠紀雄さんの著書で「日本が製造業で稼ぐ段階を過ぎている。」という記述を読んだ。野口先生は「日本は製造業で稼ぐ時代を卒業、次は金融業」…

日本を滅ぼす消費税増税

『日本を滅ぼす消費税増税』(菊池英博著、2012年11月刊、講談社現代新書)を読みました。書名からすると、税制の本?と思いますが、日本の経済史として、ハンデイで図表も多く、好著です。 著者の菊池英博さんは、1936年生まれ、「エコノミストは役に…

生きるための経済学

「東大話法」の著者、安富さんは面白い論者だ。他にどんな本を著しているのかと、図書館で検索し『生きるための経済学』(安富歩著、NHK出版08年3月刊)を見つけました。 後書にこんな文が・・・【私が経済学に最初に疑問を抱いたのは、おそらく、中学生…

経済学に何が出来るか

『経済学に何が出来るか』(猪木武徳著、2012年10月刊、中公新書)を読みました。 以下、印象に残った記述です。 マネーサプライは統御できない? 「マネーの定義の難しさ」という一節が面白い。 『「マネーサプライ」というマクロ経済の集計量は、通貨の…

ケインズはこう言った

『ケインズはこう言った』(高橋伸彰著、NHK新書、2012年8月刊)を読みました。著者は1953年生まれ、立命館大学教授。 ケインズならば、迷走日本を見てどのような処方箋、解決策を提言するだろうか。 著者は、「現在の喫緊の課題は、デフレ脱却でも…

本当の経済の話をしよう

『本当の経済の話をしよう』(ちくま新書、12年8月刊)を読みました。若田部昌澄早大教授が評論家の栗原裕一郎氏の質問に答えるという形式で、現下の経済問題を解説する本です。 面白いと思ったのは、「インセンテイブ」、「トレード・オフ」、「トレード…

自分を守る経済学

エコノミスト徳川様の著書は、「なぜ日本経済が21世紀をリードするのか」を先般紹介しました。 http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120730 「バブルの興亡」という本も以前紹介したことがあります。先日、「自分を守る経済学」(ちくま新書、2010年12…

世界経済危機 日本の罪と罰

『世界経済危機 日本の罪と罰』(野口悠紀雄著、08年12月刊ダイヤモンド社)に目を通しました。 まず【 】内に、著者の結論部分を引用します。 著者は今の世界経済をどう見たか。 【「アメリカの投資銀行モデルは崩壊した」と言われる。たしかに「巨額の…

ケインズとハイエク

『ケインズとハイエク』(松原隆一郎著、11年12月刊講談社新書、)を、大学図書館の新着本の棚に見つけ借りてきました。 ケインズ(1883〜1946)とハイエク((1899〜1892)は19世紀末のケンブリッジとウィーンに生まれたが、やがてハイエクが渡英、1…

円安バブル崩壊

『円安バブル崩壊』(野口悠紀雄著、ダイヤモンド社、08年5月刊)。07年4月〜08年3月までの週刊ダイヤモンドに連載された記事を元にしたものですから、円が123円から98円まで上昇した頃の原稿です。 「世界的カネ余りは日本の金融緩和が原因」と…

なにが日本経済を停滞させているのか

『なにが日本経済を停滞させているのか』(原田泰+大和総研、11年3月刊、毎日新聞)、日本経済の抱える問題の30論点について、概要と対応策を述べたハンデイ・ブックです。 興味深い記述をメモすると、 1.「インフレターゲットとは、金融緩和を途中でス…

エコノミストを格付けする

『エコノミストを格付けする』(東谷 暁著、09年9月文春新書)を読みました。 以下、同書の記述内容のメモ。 金子勝氏 グローバル経済や金融至上主義的なものに批判的であっただけに、議論はするどく、予測も的中することが多かった。ことにサブプライム…

「通貨」を知れば世界が読める

円ドル相場が75円台を付けています。「1ドルは50円になる」と述べる浜・同志社大学教授の見解を、彼女の新著(『「通貨」を知れば世界が読める』(浜矩子著、PHP新書、11年6月刊))で読みました。以下、面白いな!と感じたことを抜書き。(カッ…

1970年体制の終焉

『1970年体制の終焉』という面白い題名の本を読みました。著者は、原田泰さん(東洋経済新報、98年10月刊)です。 この本の意図を、最初の章でこう説明している。 【戦後経済の「過ち」を説明する理論として、私たちはすでに1940年体制論という理論を持って…

日本の失われた10年

『日本の失われた10年』(原田泰著、日経新聞99年12月刊)という本を読みました。 今日では「失われた20年」というべきでしょうが、99年に出た本ですから「失われた10年」になっています。でも読了してみて、著者の主張は概ね今日でも妥当である。つまり、著…

日米関係の経済史

『日米関係の経済史』という原田泰さんの少し古い本(ちくま新書、95年3月刊)を読みました。最近、原田さんの本を集めて読んでいるのです。 黒船来航から、バブル崩壊までの日米関係を経済という切り口で解析した内容です。 面白い話題が満載ですが、そ…

経済学を知らないエコノミストたち

「経済学を知らないエコノミストたち」(野口旭著日本評論社、2002年6月刊)を読みました。90年代以降、日本経済は継続するデフレに悩んでいます。「失われた10年」とか「失われた20年」といわれています。 この本は2002年の刊行(00年1月から02年…

大災害の経済学

『大災害の経済学』(林敏彦著、11年9月刊、PHP新書)を読みました。 著者の林さんは、現在同志社大学教授ですが、昨年3月まで放送大学教授。小生の大学卒論の審査で査読をしていただき、大学院では1年間、修士論文の指導を頂きました。 神戸在住の…

奇妙な経済学を語る人びと

地方分権についても、『自分の金』資本主義であるべきと説く。 日本はもっと地方分権すべきだという。しかし、日本の地方分権論はヨーロッパの地方分権論とはかなり異なる。ヨーロッパの地方分権論は、豊かな地域が貧しい地域に補助金を払うのはごめんだとい…

奇妙な経済学を語る人びと

人口が減っても、一人当たり生産性が上昇すれば問題はない。少子化問題についてこう述べる。 『自由な市場』論からいうと、「子どもを増やすかどうか」は、あくまで国民各自の判断によるべきだ。その判断に、制度がバイアスをかけるのなら、制度の改善を行う…

奇妙な経済学を語る人びと

『奇妙な経済学を語る人びと』(原田泰著、日経新聞03年8月刊)。これは、これから経済学を勉強しようという人に最適だと思いました。 筆者は『自由な市場』を信奉する。市場が暴走すると言われることがあるが、暴走するのは、資本主義が「他人の金」資本…

世界経済同時危機

「世界経済同時危機」(原田泰著、09年2月、日経新聞)を読みました。 著者は、「デフレの原因はマネーサプライの減少にある」とかねてから主張している。リーマンショックからの世界同時不況についても、この観点から説明できると、近年の経済データを引…

デフレは何故怖いのか

『デフレは何故怖いのか』(原田泰著、04年10月文春新書)を読みました。 著者は、第1章から第4章で、デフレ現象を貨幣数量理論で説明しようとする。 デフレとは、継続的に物価の下落する減少である。物価と貨幣量の関係を見ると、 物価=貨幣の流通速…

日本経済復活まで

『日本経済復活まで』(竹森俊平著、中央公論新社、11年5月刊)を読む。 書評欄で、「(震災)復活後の日本は輸出産業が中心になると説く」とありました。私は、「輸出産業中心の日本経済では未来は開かれない」と思っていますので、著者の論拠に興味を持…

日本国の原則

『戦時中の統制経済が戦後にも生き残り、高度成長を支えたが、日本のキャッチアップ過程が終わるとともに、むしろ日本経済の桎梏になっていった』という有名な論がある。 この論に対して面白い反論を見つけました。『1940年体制は確かに戦後まで生き残っ…

なぜ日本経済はうまくいかないか(原田泰)

自由経済を信奉する著者は、「日本経済の失われた20年」をどう評価するか。 『日本だけでバブル崩壊後の不況がひどかったのは、日本以外ではバブル崩壊後デフレにならなかったのに、日本ではデフレになったことにある。日本以外の国はバブル崩壊後、果敢な…

「資本主義はどこへ向かうのか」

「資本主義はどこへ向かうのか」(西部忠著、11年2月刊、NHKブックス)を読みました。私が最も関心を持ったのは、筆者の「資本主義と貨幣」についての論考。市場をインターネットに比しているところが面白い。 【(ハイエクの市場観について)人間の脳が…