日本を滅ぼす消費税増税

『日本を滅ぼす消費税増税』(菊池英博著、2012年11月刊、講談社現代新書)を読みました。書名からすると、税制の本?と思いますが、日本の経済史として、ハンデイで図表も多く、好著です。
著者の菊池英博さんは、1936年生まれ、「エコノミストは役に立つのか」(文藝春秋2009年7月号)で内外のエコノミスト25名中ナンバー1にランクされているそうです。 この記事をもとにした「エコノミストを格付けする」(文春新書、09年9月刊)によると、
『菊池氏は日本政府には金融資産があるから、財政危機ではないと指摘し、不況期には金融政策と財政政策の両方が必要だと言い続けた。つまり、いま世界中が現実に行っていることを、不況の日本は早く実行すべきだと述べていたわけである。もちろん、金融資産があるから純債務が少ないといえるのか、また、医療保険などの拠出金が「資産」といえるのかという問題はある。さらにこうした金融資産を安易に使った場合、国債発行への影響も考える必要がある。菊池氏は金融資産を担保にした「担保国債」を考えているようだ。もう一つ、菊池氏は、BIS規制について一貫して批判的であり、その欠陥を是正することを主張してきた。今回のサブプライム危機にも、BIS規制が大きくかかわっていたことを考えれば、菊池氏の議論はもっと注目されるべきだ。』
 著者は、「はじめに」で、この本の主張をこう要約している。
(1) デフレとは経済規模が縮小していくことであり、・・・デフレは危険極まりない社会現象である。
(2) デフレ解消策を実行すれば、法人税所得税の税収が増え、増税なしで社会保障費を賄えることを、具体的な数字で示す。
(3) 日本のデフレは恐慌型デフレであり、金融緩和だけでは解消しない。
(4) 日本の輸出産業は大きな転換期を迎えている。
海外の消費者に販売する製品を日本国内で製造し、採算が合う時代は終わっている。・・・国内は高付加価値製品生産のための機械と技術の開発に集中すべきである。これに伴って減少する国内雇用は、内需の拡大、内需関連産業の育成強化、新エネルギー開発といった具体的政策により吸収すべきである。
「あとがき」ではこう記している。
 『私は、経済が専門でない方、今まで経済に興味が薄かった方、日本がどうしてこんなひどい国になってしまったのかを憂いておられる方、意気消沈している若者、こうした国民に、過去十数年分析してきた日本経済に関する真実を、平易な言葉と表やグラフを使って知って頂きたいと思ってきた。本書はこの夢が実現したものである。』

 第2章「デフレ発生から15年、日本経済を検証する」----政治家と財務省が採った政策の失敗
 第3章「恐慌の歴史に学ぶということ――昭和恐慌と米国大恐慌
は、圧巻です。あとがきで言うように、表とグラフを用いて、日本と世界の経済に、今何が起きているかを説明してくれます。

追伸:消費税の増税については賛否両論がありますが、本書における次の記述は留意すべきです。
『日本が消費税を倍増して10%に引き上げると、日本では国税に占める消費税の比率が24.4%から37%になり、主要国の中で最高の比率になる(2012年衆院予算委員会で、阿部知子代議士の質問に安住財務大臣が回答)。さらに日本は、2012年4月に、法人税最高税率を30%から25.5%に引き下げている。その結果法人税は年間で約1兆円の減収となり、国税に占める増税後の消費税の割合は、37%をかなり超えるのではないか。』