2009-01-01から1年間の記事一覧

今年読んだ本の中から印象に残った10冊

いよいよ09年も歳の暮れ。 今年読んだ本の中から印象に残った10冊を選んでみました。 まず、生物・脳科学関係で 世界は分けても分からない 福岡伸一 講談社現代新書 単純な脳・複雑な脳 池谷裕二 朝日出版 寿命論 高木良臣 NHKブックス 「寿命論」は、人…

ぼくらの頭脳の鍛え方

『ぼくらの頭脳の鍛え方』(立花隆、佐藤優著、文春新書、09年10月刊)という本を図書館で見つけ読んでみました。 両者ともに凄い蔵書家で、立花さんは7〜8万冊くらい、佐藤さんは1.5万冊くらいの蔵書を持ち、毎月の本の購入代はほぼ10万円だそう…

日本はなぜ貧しい人が多いのか

経済のグローバル化について、参考本を探していて、面白い本を見つけました。 『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(原田泰著、新潮選書、09年9月刊)です。グローバル化だけでなく、経済全般に関して、世間に流布している通説について、図表(データ)を使…

続『日本はなぜ貧しい人が多いのか』

『日本はなぜ貧しい人が多いのか』から話題を紹介、続編です。 1. 国際競争力と国民の豊かさ 少し変わった観点で説明しています。 日本の輸出の世界シェアの伸び率を横軸に、一人当たりGDPの伸び率を縦軸にとり、1978年から2000年までの両者の関係を…

何故経済学は自然を無限ととらえたか

三菱UFJ証券の水野和夫さんが、資源の有限性が経済成長を制約するという発言をしていました(10/27中日)。 【民主党政権に対し、成長戦略が見えないとの批判が多い。それは近代社会がよってたつ基盤が揺らいでいなければ正しいが、21世紀のグローバル化は…

『疎開の風』

小説『疎開の風』、梅田秋義著(文芸春秋09年10月刊、¥800)を読みました。 デンソー出身の東野圭吾氏(「容疑者Xの献身」の著者)と並んで梅田氏(大同メタル社出身)、自動車部品会社出身の二人目の作家が誕生しました、と言って良いくらい、文章…

「日本銀行は信用できるか」

「日本銀行は信用できるか」(岩田規紀久男著、講談社現代新書、09年8月刊)という本を読みました。甚だ挑戦的な本です。 日銀の政策を決定するのは、日本銀行政策委員会である。委員会のメンバーは、総裁、2名の副総裁、それに6名の審議委員、計9名です。 …

お金の機能

「経済物理学の発見」(高安秀樹著、光文社新書)という本を5年ほど前に買いました。読み始めたがどうも面白くないので、書棚に置いたまま放置していましたが、ふっと思い出して再読してみました。 ところが、今読むと面白いのです。どうも、5年前の小生は…

ノモンハン戦争

岩波新書の『ノモンハン戦争』(田中克彦著、09年6月刊)を読みました。 ノモンハン戦争そのものの記述よりも、戦争の背後にあったモンゴル、ソ連、満州国(日本)の当時の事情の解説に重点を置いた本です。ソ連の大粛清がモンゴルでも行われたこと。モン…

ドル円相場の政治経済学

『ドル円相場の政治経済学』(加野忠著、日本経済評論社06年9月刊)を読みました。 筆者は東京銀行証券部長などを経て85年同行退職。ソロモン・ブラザーズ銀行在日代表。97年横浜商科大学商学部教授。 本書のねらいについて、著者ははしがきでこう述…

世界は分けてもわからない

『世界は分けてもわからない』‘福岡伸一著、講談社新書09年7月刊)は面白い本でした。『本』の08年6月〜09年7月に連載されたエッセイです。 同書から面白い話題を一つ。 「ソルビン酸」ってご存知でしょうか?コンビニのサンドイッチなどに含まれて…

アメリカは何を考えているか

『アメリカは何を考えているか』、岩波ブックレットの1冊を読みました。著者の赤木昭夫さんは、NHK解説委員や、放送大学教授を歴任。06年7月の刊行です。雑誌世界に04年2月、05年4月、06年8月掲載したものに加筆したもの、薄い本ですが、内容は…

円相場の内幕

『円相場の内幕』(玉手義郎著、集英社95年1月刊)という本を読みました。 筆者は、東京銀行外為デイラー、ケミカル銀行などを経てTBS入社。この本は、プラザ合意以後94年の1ドル90円割れまでの、為替市場の「現場からの報告」ともいうべき書です…

円と日本経済の実力

目から鱗」の経済書を見つけました。薄っぺらな本(岩波ブックレット)ですが、充実した内容でした。鈴木淑夫著『円と日本経済の実力』(08年3月刊行)、筆者は日銀理事・野村證券理事長を経た元衆院議員(96〜03年)です。 この10年来の日本政府の…

『単純な脳、複雑な心』

「みなさん、はじめまして。池谷裕二と申します。私はこの高校を平成元年に卒業しています。・・・」という言葉から、この本は始まります。 著者の母校の静岡県立藤枝東高校で、後輩たちに「脳科学」を語るという仕掛けです。 それにしても、平成元年に高校…

市場機構と経済厚生

「市場機構と経済厚生」(川又邦雄著、創文社現代経済学選書、1991年5月刊)は、こんな本でした。 序説において、筆者はこう述べる。 『「経済学」には「実証的」および「規範的」という二つの視点からの分析が可能である。 実証的経済学の命題は、典型的…

日本経済を襲う二つの波

『日本経済を襲う二つの波』(リチャード・クー著、徳間書店08年6月刊行)を読みました。 先日、為替レートに関する著者の基本的な考え方を知りたくて、初期の著作「投機の円安 実需の円高」(96年1月刊行)を読んだのですが、興味深い記述でした。1…

為替が分かれば世界が分かる

『為替が分かれば世界が分かる』(文芸春秋社)を読む。著者は榊原英資、元大蔵省審議官です。2002年12月の発行だが、本のあとがきにこうあった。 「小泉総理、竹中大臣等が「改革」へのある種の情念を抱いていることはたしかなようだが、その発想、政策形…

投機の円安 実需の円高 2

今日、貿易で必要とされる通貨量の100倍にも及ぶ通貨取引があるという。それでも、為替レートを決めるのは、通貨の実需であって、通貨の投機ではないといえるのか?『一日の為替取引が1兆ドルもあるときに、その5%しかない実需で、全体説明しようとす…

投機の円安 実需の円高

『米国人は貯蓄をしないで放漫な生活をし、その結果、自国で生産するより多くを消費しているから貿易赤字になる。日本人は一所懸命ものを作り、消費を切り詰め、こつこつ貯蓄しているから黒字が出る。米国人はキリギリス、日本人はアリだ。米国人は日本の黒…

投機の円安 実需の円高

修士論文のテーマに関連する文献を探していて、「投機の円安 実需の円高」(リチャード・クー著、東洋経済新報96年1月刊)を見つけました。 96年の刊行ですから、アジヤ通貨危機も9.11テロも、100年に一度の大不況も書かれていません。しかし、為…

経済学の考え方

「経済学の考え方」(宇沢弘文著、岩波新書、89年1月刊)を読みました。 アダム・スミスの項に、こんな文章がありました。 【スミスの『道徳感情論』は、・・・同感という概念を導入し、人間性の本質を明らかにしようとした。人間性のもっとも基本的な表…

為替市場の読み方

「為替市場の読み方」(佐中明雄著、講談社現代新書、98.07刊)を読みました。 外国為替の一般向け解説書ですが、「第5章外国為替市場の変動と予測」が大変参考になりました。以下、この章の内容を要約で紹介します。 為替相場決定の古典的学説としては、「…

トービン税入門

「トービン税入門」(ブリュノ・ジュタン著、和仁道朗訳、社会評論者06年3月刊)を読みました。1971年8月、アメリカのニクソン大統領は、ドルの金への交換性停止を発表した(グローバル化の真の出発点である)。第2次大戦後に成立したIMF体制(ドルを…

為替レートの謎を解く

「為替レートの謎を解く」(クルーグマン著、伊藤隆敏訳、東洋経済新報90年1月刊)を読みました。 著者の講演録で、刊行時点を見て分かるように、データは1990年以前(1970〜)のものですが、興味深い指摘をしています。以下、その一端の紹介です…

国際金融論

「国際金融論」(河合正弘著、94年6月東京大学出版会刊)を読みました。以下、同署の興味深い論点について記します。第3章は、為替レートの決定理論です。 為替レート決定モデルの予測能力に関しては、変動レート制期の全体を通じてレート変動を安定的な…

「自己組織化の経済学」

「自己組織化の経済学」(ポール・クルーグマン著、東洋経済新報97年8月刊行)を読みました。 複雑系の科学が、経済学にどのように応用できるか?筆者は「創発」という概念に着目する。市場の「見えざる手」によってだれも意図しなかった帰結に導く様子をア…

良い経済学悪い経済学

「良い経済学悪い経済学」(日経新聞、97年刊)という本を読みました。 著者はポール・クルーグマン、昨年のノーベル経済学賞の受賞者です。彼の著書に「為替レートの謎を解く」という本があると聞き、愛知県図書館に探しに行きましたが、生憎誰かが読んで…

「郵政改革とは何であったか?」

『失われた<20年>』(朝日新聞「変転経済」取材班編、岩波書店09年2月刊行)を見ていたら、面白い解説が出ていました。【97年11月22日午前1時過ぎ、橋本竜太郎(首相)は厚生相の小泉純一郎に電話でこう伝えた。「小泉さん、あなたが主張してき…

日本が震源地?

『スラム化する日本経済』(浜矩子著、講談社α新書、09年3月刊)を読みました。「グローバル恐慌(岩波新書))」の姉妹編とのこと、本屋で手に取ってみたら、「日本が真の震源地」という章が目に付き、読んでみようと買った次第です。以下、読後感です。 …