日本はなぜ貧しい人が多いのか

経済のグローバル化について、参考本を探していて、面白い本を見つけました。
『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(原田泰著、新潮選書、09年9月刊)です。グローバル化だけでなく、経済全般に関して、世間に流布している通説について、図表(データ)を使って検証を試みた本です。その中から、面白い話題を紹介します。
1. 日本の貧困率の高さは何が原因か。
日本は、市場所得(社会保障給付前の税込み収入)だけで見ると、相対的貧困率(中位所得者の半分以下の所得者の比率)は2000年で、OECDの主要14か国中6番目に低く、北欧、オランダ、カナダに次いで平等な国である(しかし、社会保障給付後の可処分所得では米国に次いで2番目に不平等だ)。1990年代央では1番低いもっとも平等な国だった。しかし、最終的な可処分所得で不平等になるのは、児童手当、失業手当、生活保護など支給額が少ないからである。
 これまでの日本の社会安定機能は、組織を通じて生活の安定を図るという方法だった。公共事業を増大するというのは、建設会社にお金を渡して人々を雇ってもらう。雇われた人々が、社会にとって必要なインフラを建設しているのなら一石二鳥で良いことに違いない。しかし、それが無駄な公共事業だったら、そんなことをするコストが高すぎる。日本も西欧諸国のように、個人に直接分配する社会安定機能に置き換える必要がある。
2. 失われた?年、日本銀行は何をしてきたか。
著者の主張は、「マネーの縮小が物価と金利を低下させる」(M2、消費者物価、コールレートの関係を図示する)。
「消費者物価は主に、食料も含めた資源価格、サービスの価格、ハイテク(商品の)価格で構成される。このうち日本の消費者物価を動かす最大のものは、サービスの価格、つまり人件費(賃金)である。
日銀は、消費者物価の前年同月比が少しでもゼロ%を上回れば、金融を引き締めてきた(マネーを引き締めた)。結果、景気が悪化し企業利潤は削減され、賃金も上がらない。すなわち物価は上がらない。」つまり、著者は
長期金利=名目GDPの伸びが近似的には成立する。また、マネーの伸び=名目GDPの伸びが成立するから、日本は低金利を脱却できないし、GDPの伸びが実現しない。日銀は、「ゼロ%物価目標政策」は止めるべきと主張する。】
3. 銀行への公的資金注入は役に立ったのか。
公的資本での(銀行への)資本注入の必要性を唱える人びとの主張は・・正しいかどうかは、感嘆に調べることができる。銀行に資本注入した後で、貸し出しが伸び、それに応じて生産が増加していル稼動かを見ればよい。日本では、1998年3月に1.8兆円が21行に、99年3月に8.6兆円が32行に、03年6月に2兆円がりそな銀行に注入された。
 これら資本注入額と銀行貸し出し、鉱工業生産指数、株式時価総額、銀行株時価総額の図を掲示して、98年3月は資本注入後、株価も生産も貸し出しも低下。99年3月は、生産・株価は回復。しかし、貸し出しは低下しつづけた。
4. 政府の無駄遣いを防止するには、政府にカネを持たせないようにすることだ。
「どの都知事が財政家だったのか」という章がある。
美濃部、鈴木、青島、石原の都知事4人の在任中の、東京都の歳出、地方税収入、赤字の図が示されている。
 結論は、「どの知事も税収が増えれば使ってしまう!」
国についても、増税で税収が増えれば使ってしまうから、増税財政赤字の削減は出来ない!
ごもっともです。(つづく)