続『日本はなぜ貧しい人が多いのか』

『日本はなぜ貧しい人が多いのか』から話題を紹介、続編です。
1. 国際競争力と国民の豊かさ
少し変わった観点で説明しています。
日本の輸出の世界シェアの伸び率を横軸に、一人当たりGDPの伸び率を縦軸にとり、1978年から2000年までの両者の関係をプロットする。
国際競争力(世界シエア伸び率)が上昇すれば日本が豊か(1人辺りGDPの伸び)になるなら、右上がりになる筈だが、そうなっていない(英、米、独、仏、イタリヤ、カナダにも、その関係はみられない)。
一方、アジヤの国(シンガポール、韓国、マレーシヤ、タイなど)では、右上がりつまり、国際競争力の上昇とともに1人当りGDPが増加する関係がみられる。
 日本では、いわゆる「国際競争力」を過度に気にする傾向があるが、先進工業国では、「国際競争力が経済水準を向上させる」という関係はない。一国の経済水準は、輸出部門ではなく、国内部門の生産性によって左右される。
さて、その生産性について
2. 日本の労働生産性
日本経済は90年代以降停滞しているが、1990年から世界金融危機が起こる前の07年まで、日本の労働生産性上昇率は、実はほとんど低下していなかった。時間当り実質GDPの成長率は、バブル崩壊後も1.9%〜2.2%となっており、80年代前半の成長率2.5%から0.2〜0.6%しか低下していない。
 なぜ90年代以降の日本経済が低迷してきたかと言えば、需要が減退し、労働投入量が減少してきたからである。
 その需要の減退と為替レートの関係
3. 円は安いのか、高いのか?
  物価水準で見てみよう。
「実質実効為替レート」(日銀作成)がある。09年で110をわずかに上回った水準。これは1973年を100とし、貿易相手国のウェイトと相対的なインフレ率で調整した指数なので、円はほぼ1973年の水準にある。07年7月の時点では、これは90まで低下していたので、日本の円は安すぎた?
しかし、物価で調整しただけで、本当に円が安いと言えるか?
為替レートが高くなるとは、日本人の賃金が国際的に見て高くなるということである。
90年以降のドル建て日本賃金と失業率の図を掲げて、「要するに90年代の日本は、円の上昇で国際的にみて賃金水準が上がり、海外のものは安く買えるようになった半面、仕事を失うようになった」と説く。(95年以降、経常収支の縮小幅と円レートがパラレルに動く図を示す)
 失業の増加は当然需要の減退を招くわけだが、一方、輸出して黒字を貯めこんでも、その外貨を国民の厚生のために使えないという意見がある。
4.経常黒字をため込むと損になるのか?
経常収支が黒字であるとは、日本が海外に投資をしていることを意味する。
(1980年以降で)100万円をドルに換えて、米国債、米国株インデックス、金に投資して、10年後に換金した場合と、日本国債日本株インデックスを買って10年後の額を比べた図が、掲載されている。
1985〜1996年までは米国株が一番得をした。国債の場合は、米国債を持っていると日本国債を持つよりも得だった歳が1年だけ多い。
 金は03年までは儲からなかったが、その後利益を得ている。

「経常黒字は損になっている」とは必ずしもいえない、と著者は言うが、「投資で儲ける才能がなければ、黒字を貯めても仕方ない」ということにならないだろうか?