2007-01-01から1年間の記事一覧

日本のいちばん長い夏

なんとか積ん読しておいた本を片付けようと、読書三昧の年末です。 「日本のいちばん長い夏」(文春新書、半藤一利編)は、1963年6月、文芸春秋社が終戦の生き証人とも言うべき30人、(内吉田元首相と町村金五北海道知事(当時、現官房長官の父)の二…

とんでもない人を首相にしてしまった

もう年末です。気がついてみると、読むつもりで買い込んだ本が何冊かツンドク状態になっている。というわけで、この所せっせと読み始めた。高村薫さんの【作家的時評集 2000-2007】(朝日文庫)もその1冊です。高村さんは言う。【最近、自分が生きてきたはず…

駄目になることがある

もう一人、今年なくなった方の話題です。 岩波新書で10年前に出た『書き下ろし歌謡曲』という阿久悠の本、もう一度読み直しました。 以下は、こんな歌が載ってたんだな、と気付いた詩です。 「セックスレス・男の言い分」 男にとって 唯一の救いは 女が性に…

国家の罠

佐藤優著『国家の罠』は、米原万理さんが、05年12月25日の読売紙上<今年の3冊>で「今年わが国で誕生した作家たちの中で私的にはNo1のデヴュー作」と激賞した本を文庫で発刊したもの。第59回毎日出版文化賞特別賞受賞作品とのことです。 米原著「打ちの…

自伝の人間学

保阪正康さんは近年昭和史の研究家として有名です。「なるほど自伝というものは、その時代の史料なんだな」と、保阪著「自伝の人間学」を手にした時思いました。ところが、「あとがき」まで読んできて一驚しました。 【本書は、月刊誌『新潮45』に、昭和61…

美しくない日本・壊れる日本人

新潮文庫の11月は面白い企画で新刊を出した。 『美しくない日本』フェアと題する以下の3冊です。 壊れる日本人 柳田邦男著 自伝の日本学 保阪正康著 国家の罠 佐藤 優著 早速買い求め、読んでみることにしました。 まずは『壊れる日本人』の紹介です。 「ケ…

ただ時の過ぎゆかぬように

阿久悠さんの『ただ時の過ぎゆかぬように』(岩波書店03/01/28刊)を読みました。 書名が難しいのですが「ただぼんやりして時代が過ぎていっては具合が悪いので、書き残しておくメモ」というような意味に、私は取りました。私も「ただ読み過ごさぬように」、…

憲法9条・イラク戦争・アメリカの時代

【憲法第9条があっても、それを極限までねじまげ、ここまでアメリカにコミットした小泉首相は、完全に国を誤ったというべきである。第9条がなかったら、小泉首相はどこまでアメリカに肩入れし、どれだけ日本人の血を流していただろうか。想像するだに恐ろ…

いわゆる小泉改革

以下、いわゆる小泉改革について立花さんは語ります。 【私は、小泉首相の郵政民営化の基本的発想そのものが根本的に間違っていると思う。 郵政民営化論者の最大の狙いは、なんといっても事業体としての郵政公社を解体し、郵政3事業をバラバラにして、それ…

ロッキードとライブドア

『滅びゆく国家』という本を図書館で見つけました。立花隆著、日経BP刊です。副題に「日本はどこへ向かうのか」とあります。日経BP社のウェブページに著者が連載した時評を編集したもので、『政治家が大きくまちがえるとき、いつの時代でも面白くない運…

民営化とヴァウチャー

今、「民営化で誰が得をするか」(石井陽一著、平凡社新書)という本を読んでいます。 『所有移転型の民営化とは、基本的には国有財産の売却である。国民主権の立場からいえば、国有財産は国民全体に帰属するものであり、事実、日本の公社・公団は、国民の税…

やはり、運動!

「文芸春秋」10月号に”ぼくは全身「生活習慣病」”という立花隆さんと主治医の永井良三さん(東大医学部教授)の対談が載っていた。面白かった点を紹介します。 【いろんな検査をすればするほど以上が見つかって・・要するに、僕の体は”生活習慣病のデパー…

「分かる」ということ

山鳥 重(あつし)著『「わかる」とはどういうことか』(ちくま新書、02年4月刊)という本を読みました。 筆者は神経内科が専門で、その中でも高次機能障害学という分野を主として研究している。 脳梗塞や脳出血などで不幸にして脳に損傷を生じてしまい、そ…

13階段

米原万理さんの書評『打ちのめされるようなすごい本』で、推理小説『13階段』を激賞していたので、読んでみました。まず、彼女の推薦の弁を紹介します。 【高野和明著”13階段”(講談社/講談社文庫)を寝しなに読み始めたのがまずかった。2001年度江…

「私家版・ユダヤ文化論」

「私家版・ユダヤ文化論」(内田 樹著、文春新書)なる本を読みました。 正直言って、とても難解な本です。 冒頭、著者は次のエピソードを紹介しています。 【ジェイコブ・シフ(1847-1920)という人物がいた。シフはドイツ生まれのユダヤ系の銀行家で、アメ…

「記憶力を強くする」

故米原万理さんの書評を集めた本(「打ちのめされるようなすごい本」文芸春秋刊)を読んでいたら、池谷裕二著「記憶力を強くする」(講談社ブルーバック)を激賞していた。 「物欲しげなタイトル・・・どうせハウツーもののゴミ本だろうと、危うく看過すると…

人生の達人たち

本屋を冷やかしていて『縁は異なもの』(光文社文庫)なる本を見つけました。先日亡くなられた河合隼雄さんと故白州正子さんの対談を編んだものです。面白そうだと購入。読んでみました。 K 私は自分のやっている仕事は職人に似てると思うこと多いですね。 …

HIVはエイズの原因?

先日ご紹介した本(生物と無生物のあいだ)の著者福岡伸一さんに興味を感じ、図書館の検索で「福岡伸一」を見てみた。いくつかの著書の中で「マリス博士の奇想天外な人生」という訳書を見つけ出して借りてきました。 「マリス博士」とはPCRを発明した(そ…

落日燃ゆ

東京裁判のNHK特集を見て、昔読んだことがあるのですが、城山三郎著『落日燃ゆ』(城山さんも先日NHK特集がありました)を再読したくなりました。A級戦犯として死刑に処せられた唯一の文官、広田弘毅の伝記です。 2.26事件の後、首相に就任した広…

愛すべき名歌たち ―私的歌謡曲史

”一日二杯の酒を飲み、肴は特にこだわらず マイクが来たなら微笑んで、オハコを一つ歌うだけ” 川島英五が歌った『時代おくれ』です。 ”似合わぬことは無理をせず 人の心を見つめつづける 時代おくれの男になりたい” この詩の作者、阿久 悠がなくなりました。…

渋滞学

「体内の渋滞学」という面白い話題を紹介しましょう。(新潮選書「渋滞学」から) 車の「渋滞」は皆さんご承知ですが、人間の体内にも「渋滞」があります。たとえば、動脈硬化は、血管の内部にコレステロールがたまってその径が細くなる病気ですが、そうなる…

わが人生の歌がたり

流行歌の話題です(昔は演歌といわず流行歌)。五木寛之の『わが人生の歌がたり』 を読みました。 著者の語り。いちばんうなったのは、「星の流れに」を語った次のくだりです。 『星の流れに 身を占って 何処をねぐらの 今日の宿 荒む心で いるのじゃないが …

分かるっていうこと

『遺伝子・脳・言語』(堀田・酒井著、中公新書、07年3月刊)という本を読み ました。「カフェ・デ・サイエンス」という武田計測先端知財団の、市民と科学者が 対談する催しを本にまとめたものDす。 以下、脳の「分かり方」についての議論、面白かったの…

続・生物と無生物のあいだ

『重窒素アミノを与えると瞬く間にそれを含むタンパク質がネズミのあらゆる組織に現れるということは、恐ろしく早い速度で、多数のアミノ酸が一から紡ぎ合わされて新たにタンパク質が組み上げられているということである。 さらに重要なことがある。ネズミの…

『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)

という本が評判になっています。 以前紹介した文春新書「もう牛は食べても安心か」の著者、福岡伸一さんが、PR雑誌「本」に、05年7月から07年6月まで連載されたものをまとめたものです。 20世紀後半から、もっとも発展した科学技術は、コンピュータ(イン…

『遺伝子・脳・言語』

『遺伝子・脳・言語』(堀田・酒井著、中公新書、07年3月刊)という本を読み ました。「カフェ・デ・サイエンス」という武田計測先端知財団の、市民と科学者が 対談する催しを本にまとめたものDす。 以下、脳の「分かり方」に着いての議論、面白かったの…

「石の肺」を読む

『国は1975年に、アスベストの発ガン性をみとめたうえで、禁止ではなく、法 律で厳しく管理して使用することにしました。 しかし、じっさいの現場では、アスベストの危険などは露ほども知らされておら ず、管理とは名ばかりだったのです。』 この一節が…

再び構造主義

『寝ながら学べる構造主義』(内田樹著、文春新書、平成14年6月刊)を読みまし た。 第1章 構造主義というのは、ひとことでいってしまえば、次のような考え方のこと です。 私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私た…

構造主義について

内田樹に興味を抱き、『寝ながら学べる構造主義』(内田樹著、文春新書、平成14 年6月刊)を図書館で借り読んでみました。 構造主義というのは、ひとことでいってしまえば、次のような考え方のことらし い。 【私たちはつねにある時代、ある地域、ある社…

私の身体は頭がいい

内田 樹(うちだたつき)という学者(神戸女学院大学教授、フランス現代思想) がいる。本人の言によると、「余暇に武道の稽古をしている大学教授」というよりは 「生活のために大学教授をしている武道家」、合気道など日本武道が好きらしい。武 道家として…