HIVはエイズの原因?

 先日ご紹介した本(生物と無生物のあいだ)の著者福岡伸一さんに興味を感じ、図書館の検索で「福岡伸一」を見てみた。いくつかの著書の中で「マリス博士の奇想天外な人生」という訳書を見つけ出して借りてきました。
 「マリス博士」とはPCRを発明した(その功績により、1993年にノーベル化学賞及び日本国際賞を受賞)キャリー・B・マリス博士(Kary Banks Mullis, 1944年12月28日 生まれ )で、この本は博士の自伝を福岡さんが翻訳したものです。
 博士は数々の奇行で知られている。いわくサーフィン三昧(ノーベル賞受賞の時サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズと言われた)、いわくLSDをやっている、いわくあらゆる職場で女性問題を起こし辞めている等々。
 PCRとはポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 法の意味で、簡単に言うとDNAの増幅法です。
 資料から採取したDNAを何千倍、何万倍も増やすことで、DNAの分析が可能になりました(だから髪の毛1本でその人のDNAが分かる)。ですから、今日の分子生物学の大発展はPCR法の発明(1986)によって可能になったわけです。
 この本の中で、博士がPCRについての論文を最初に発表した時のエピソードを書いています。

『PCRが野火のごとく広まっていくであろうと、私は確信していた。・・・「ネイチャー」誌は一も二もなく掲載を決定するだろうと。
 「ネイチャー」編集部の返事は「却下」だった。「ネイチャー」に続いて有名な科学雑誌サイエンスもこの発見を認めなかった。「サイエンス」はこう言ってきた。「貴殿の論文はわれわれの読者の要求水準に達しないので、別のもう少し審査基準の甘い雑誌に投稿されたし」と。この野郎、と私はうめいた。
・・・結局、レイ・ウー博士が編集している「酵素学方法論」誌が私の論文を掲載してくれることになった。彼はPCRの真価を理解してくれていた。』

 しかし、私が最も興味を惹いた記述は、エイズの原因についての以下の記述です。
 『1984年、フランスのパスツール研究所のリュック・モンタニエとアメリ国立衛生研究所のロバート・ギャロが、それぞれ独立してレトロウィルスHIV,すなわちヒト免疫不全ウィルスこそがエイズの原因である、と発表した時、・・・科学的発見がまた一つ増えたのだと感じただけだった。
 4年後、・・・スペシャリー・ラボ社は赤十字社が一日に収集する何千リットルもの献血液中にレトロウィルスが潜んでいないかどうか、PCRを使って検出する方法を開発しようとしていた。資金提供者に向けて、私は経過報告書を書いていた。冒頭の一文を「HIVエイズの原因とされている」と書き出した。
  私は同社のウィルス学者に「HIVエイズの原因である、という記述の根拠となる論文を引用しておきたいのだが、それはどこにあるのか、と聞いてみた。』
 ・・・その論文が、実はないというのです。
 本当?だとすると、HIVが本当にエイズの原因かどうかは、証明されていないことになる。

 まぁエイズのことは、私の専門外でよくわかりませんが、国の経済と政策に関しては、良く証明されていないことを、平気で真実であるかのごとく発言をされる方がいます。
 たとえば、「経済が成長さえすれば、全国民に富が行き渡る」など。