続・生物と無生物のあいだ

『重窒素アミノを与えると瞬く間にそれを含むタンパク質がネズミのあらゆる組織に現れるということは、恐ろしく早い速度で、多数のアミノ酸が一から紡ぎ合わされて新たにタンパク質が組み上げられているということである。
 さらに重要なことがある。ネズミの体重が増加していないということは、新たに作り出されたタンパク質と同じ量のタンパク質が恐ろしく早い速度で、バラバラのアミノ酸に分解され、そして体外にすてさられているということを意味する。』
 さらに『投与された重窒素アミノ酸が、身体のタンパク質中の同一種のアミノ酸と入れ替わったのかどうかを確かめてみた。つまりロイシンはロイシンと置き換わったかどうかを調べたのである。
 ・・・確かに実験後、ネズミのロイシンには重窒素が含まれていた。しかし、重窒素を含んでいるのはロイシンだけではなかった。他のアミノ酸、すなわち、グリシンにもチロシンにもグルタミン酸などにも重窒素が含まれていた。
 体内に取り込まれたアミノ酸は、さらに細かく分断されて、あらためて再分配され、各アミノ酸を再構成されていたのだ。』
『私たちは、自分の表層、すなわち皮膚や爪や毛髪が絶えず新生しつつ古いものと置き換わっていることは実感できる。しかし、置き換わっているのは何も表層だけではないのである。身体のありとあらゆる部位、それは臓器や組織だけでなく、一見、固定的な構造に見える骨や歯ですらもその内部では絶え間のない分解と合成が繰り返されている。』
 身体のあらゆる部分が時々刻々入れ替わっているというのです。そして、この後の記述は驚きです。
『入れ替わっているのはタンパク質だけではない。貯蔵物と考えられていた体脂肪でさえももダイナミックな「流れ」のなかにあった。体脂肪には窒素が含まれない。・・重水素を用いて脂肪の動きを調べてみた。
 (エネルギーが必要な場合)摂取された脂肪のほとんどすべては燃焼され、ごくわずかだけが体内に蓄えられる、と我々は予想した。ところが、非常に驚くべきことに、動物は体重が減少しているときでさえ、消化・吸収された脂肪の大部分を体内に蓄積したのである。)
 脂肪組織は余分のエネルギーを貯蔵する倉庫であると見なされていた。・・・実験の結果はまったく違っていた。貯蔵庫の外で、需要と供給のバランスがとれているときでも、内部の在庫品は運び出され、一方で新しい品物を運び入れる。脂肪組織は恐るべき速さで、その中身を入れ替えながら、見かけ上、ためている風をよそおっているのだ。』
 体脂肪を貯めこめば、少なくとも飢饉の時は有利だろうと思っていましたが、体重が減少している時も『脂肪の大部分を体内に蓄積』?

この本の結論、『すべての原子は生命体の中を通り抜けているのである。』 というのです。