『遺伝子・脳・言語』

『遺伝子・脳・言語』(堀田・酒井著、中公新書、07年3月刊)という本を読み
ました。「カフェ・デ・サイエンス」という武田計測先端知財団の、市民と科学者が
対談する催しを本にまとめたものDす。
以下、脳の「分かり方」に着いての議論、面白かったので紹介します。

「分かった」というときに、脳の中でどんなことが起っているのか?
MRIという装置を使って測定し、文章が分かっているときに活動する脳の場所が
見つかりました。それは左脳の前頭葉の下の部分です。「ブローカ野」という場所を
お聞きになったことがあると思います。・・・そのすぐ下のところです。
学校教育で「分かる」というのは、頭の中にファイリングキャビネットのような入
れ物があって、入って来る言葉を次々と分類して放り込むことができる状態にあるこ
とです。
(脳内のキャビネットは人によって違う。だから分かり方は人によって色々あるこ
とになる。(NOZUE)
「自転車に乗れるというのは反射神経じゃないですか。」
自転車に乗れるようになったときに何が(脳に)起っているかを考えてみると、実
は獲得した能力は何もないんです。むしろ、余計な出力が出なくなった。その結果と
して、自転車に乗れるんです。
学習したっていうことは、何かを得たことだ思うかもしれないけれど、得たんじゃ
なくて、余計なことをしなくなったんだということもある・・・

もう一つ、手話が自然言語だという話も面白い。
手話が言語であることは、皆さんおわかりだと思います。・・たとえば、コン
ピュータのプログラミング言語人工言語であって自然言語ではありません。
自然言語であるかどうかという一番簡単な見分け方は、赤ちゃんが自然に覚えて第
一言語として身につけられるかどうかです。日本手話は、そのように第一言語として
自然に獲得できる言語です。そして手話を使って考えたり、互いにコミュニケーシヨ
ンが完璧にできるのです。
(手話は)言語に必要な文法や語順などをすべて備えている・・・それが二番目の
証拠です。
左の前頭葉にあるブローカ野と呼ばれる場所が不孝にして脳梗塞になったりする
と、言葉を失ったり、思うように話せなくなったりすることがあります。・・手話を
第一言語として使っていたろう者が、左脳のトラブルで失語になることを報告してい
る。・・・これが3番目の証拠です。
日本語の音声を聞いて話の内容を理解する場合と、日本手話を見て同じ内容を理解
する場合の脳の活動を調べて、どちらも完全に左脳優位・・・人間の脳が生み出した
言語ということに関しては、音声も手話も完全に同じなのです。