ロッキードとライブドア

 『滅びゆく国家』という本を図書館で見つけました。立花隆著、日経BP刊です。副題に「日本はどこへ向かうのか」とあります。日経BP社のウェブページに著者が連載した時評を編集したもので、『政治家が大きくまちがえるとき、いつの時代でも面白くない運命に遭わされるのは国民のほうだ。私は小泉首相はこれまでのところ小さな成功は収めたが、大きな失敗を遂げつつあるのではないかと思っている。』(06年3月)とあとがきにある。
 私は日頃、今の政治家と太平洋戦争当時の政治家とどちらが賢いのだろうかと考えています。立花さんも同じことを考えているのだろうか、と借りて読むことにしました。
 以下、面白いと感じた内容を二,三紹介します。まずはライブドア
【30年前のロッキード事件・・・実はあの事件は、本体部分がブラックの世界の闇の中に消えてしまって、真相がほとんどわからないままに終わった事件である。
 真相がきれいにあばかれたのは、・・・もっぱら丸紅ルートの田中角栄元首相に連なる部分だけだった。
 しかし、あの事件には、基本的に三つの金の流れがあった。丸紅ルート以外に、児玉ルートと小佐野ルートを経由した金の流れがあった。
 金額でいうと、丸紅ルートは6億2千万円・・・児玉ルートは、領収書が残された部分だけで23億円と、丸紅ルートの何倍も大きな流れがあったことが明らかだったのに、その流れはほとんど解明されなかった。また、小佐野ルートも金額からいっても、かかわっている政府高官からいっても、丸紅ルート以上の話であったのに、これまたほとんど明るみに出なかった。
 なぜ明るみに出なかったのかというと、児玉も小佐野もブラック社会のブラックの部分を代表する人物だったからで・・・ブラックのプロとして、口がとことん堅く、秘密を決してもらさなかったからである。】
 ライブドア事件について語っている。
 【検察は、この際ぜひとも、かつてやろうとして果たせなかった、ブラック社会への切込みを果たしてほしいものである。 ライブドア事件、私が見るところ、まだとば口で、本体が出てきたら、堀江容疑者など、脇役としてかすんでしまうような展開をするかもしれない。】

 ぼろ儲けの話には必ずブラック社会が絡んでくる。立花さんの期待に反して、ブラック社会の介入の模様は解明されなかったらしい・・・野口副社長の死因も、ついにお蔵入りみたいです。
もう一つ、
 【一連の出来事で、誰が一番儲けたかというと、それは文句なしにリーマン・ブラザーズである。・・・
 グローバル化の波の中で、各国の金融資本が海外に出て稼ぐことが基本的に自由化されたが、その自由化(金融ビッグバン)によって稼ぎまくっているのは、もっぱらアメリカの金融資本である・・・
 アメリカの海外直接投資による収益率は、全世界に対して10.3%。(アメリカ以外の国からの対米直接投資は、平均で4.2%。)。その内訳を見ると、対欧投資からは9.6%にとどまっているのに対して、対日投資からは、実に13.9%もの収益をあげている。これだけ日本からの毟り取られ方が異常に進んでいるというのも、いわゆる小泉改革アメリカの利益をはかるためとしか思えない方向性をもって推進されてきたからであろう。】(続く)