2009-01-01から1年間の記事一覧

通貨危機と資本逃避

『通貨危機と資本逃避』(高木信二著、東洋経済新報社、03年2月刊)という本を読みました。副題に「アジヤ通貨危機の再検討」とあるように、97年後半からタイを起点に始った通貨危機を理論的に分析した書です。 急激な資本流入と資本逃避を説明するモデ…

「ベーシック・インカム」の話

「定額給付金」が話題になっていますが、「ベーシック・インカム」という言葉をご存知でしょうか。 ベーシック・インカムとは、総ての国民の銀行口座に、定期的に国から定額の給付金が振り込まれる制度です。 「失われた年金」が問題になっていますが、今の…

完全数

江夏の背番号28は完全数であることを小説にした『博士の愛した数式』という小川洋子さんの作品がありました。 この小説は、まだ読んでいないのですが、本屋で『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)を見つけて衝動買いし、読み始めたら、最初にこの完全数の…

ノーベル賞と原爆の関係について

「日本にノーベル賞が来る理由」(朝日新書、2008年12月刊行)という本を図書館の書棚に見つけました。著者は、伊東乾(けん)という。略歴を見て、これは面白い人だと思いました。作曲家にして指揮者という。更に、東京大学大学院物理学専攻博士課程…

寿命論(2)

タンパク質に翻訳されない非コード領域は、遺伝子の発現を抑制しているらしいことが分かってきました。【非コード領域でつくられる小分子RNAの主要な機能が「抑制作用」であることから、過剰と見えたゲノムの役割は、生命システムを相対として「抑制系」…

寿命論(1)

生物科学の話です。「寿命論」(高木由臣著、NHK出版09年1月刊)を読み、こういう研究もあるのだなと、思いました。最新の生物科学の知見を基に、寿命に関する話題について述べています。1. 最初に、「寿命」をどう定義するのでしょうか?誕生から死ま…

平成経済20年史

「平成経済20年史」(幻冬舎新書)という本が出ています。著者は、紺谷典子さん。TVでよく顔を見るからご存知の方も多いでしょう。日本証券経済研究所の出だから、株式市場に詳しい。この本、帯の文句が良い。『「改革」するたび、生活は悪化した。』 どん…

グローバル恐慌(2)

円はかくれ機軸通貨?そもそも、サブプライム・ローン証券化問題は、なぜここまで見てきたような広がりを示すに至ったのか。いくら巧みに証券化手法を駆使しても、買い手がいなければ商品は売れない。本質的な不透明さとリスクが付きまとう債権担保証券に、…

グローバル恐慌

「グローバル恐慌」(浜矩子著、岩波新書)を読みました。浜矩子さんは、時折中日新聞に寄稿をしているのですが、その論旨が的を得ているので、日頃、注目しているエコノミストです。今月の岩波新書に、彼女の著が出ていると聞き、すぐ買ってきました。とて…

風流武辺 

広島に縮景園という名園がある。名古屋城に二の丸庭園という庭園があります。二つの庭園の共通点は?日本庭園に詳しい方はご存知です。 二つともに、上田宗箇という作庭家の作です。彼は、戦国時代の武将ですが、晩年、作庭家として活躍し、まだ茶道において…

偽装建築と金融派生商品

『自然な建築』(隈研吾著、岩波新書、08年11月刊)を読みました。以下、感想です。著者は、1954年生まれ、株式会社隈研吾建築都市設計事務所代表(主宰)。慶応大学理工学部システムデザイン工学科教授。冒頭、著者はこう述べています。『「20世紀と…

ローマから日本が見える

「ローマから日本が見えるる」(塩野七生著、集英社文庫)を読みました。昔、ロボット博士の故糸川英夫さんが著書で「司馬遼太郎さんと塩野七生さんが素晴らしい」と賞賛していました。司馬さんの素晴らしさは分かりますが、塩野さんはよくわかりませんでし…

後期高齢者医療制度

お正月に「後期高齢者医療制度」(伊藤周平著、平凡社新書、08年10月刊)を読みました。筆者は鹿児島大学法科大学院教授。序章で述べているが、「後期高齢者医療制度は廃止し、野党の廃止法案のように、いったん元の老人保険制度に戻したうえで、高齢者…

金融サミットG20の意味するもの

前日の続き。水野さんは米ドル体制の終わりに言及しています。『サブプライム問題に始まる世界金融危機は、ドルの終わりの始まりであり、G7の終わりの始まりでもあるといえるのです。08年11月14,15日にワシントンで開かれた金融サミットG20は、ま…

400年来の危機

友人からの年賀状、「なぜ100年に一度の危機?」とありました。正月休みに読んだ本に、その回答がありました「金融大崩壊」(水野和夫著、NHK新書、08年12月刊)です。 「100年の危機」どころか、「400年来の危機」と筆者は説いています。「国民…

だましだまし人生を生きよう

「だましだまし人生を生きよう」(池田清彦著、平成21年1月1日刊)を読みました。書名の面白さと筆者に惹かれて書店で衝動買いしたのです。池田清彦という筆者の名を、時折、雑誌や新聞の文章で見ていて、特異な思想家として注目していたのです。略歴を…

[]私の平成20年の10冊

「私の平成20年の10冊」を選んでみました。年末の各紙が「今年の3冊」などの特集を組んでいました。私は、欲張って「10冊」を選んでみました。 今年は100年に1回の大変動の年で、経済書に考えさせられました。野口悠紀雄さんの著作から、資本開国…