ノーベル賞と原爆の関係について

「日本にノーベル賞が来る理由」(朝日新書、2008年12月刊行)という本を図書館の書棚に見つけました。

著者は、伊東乾(けん)という。略歴を見て、これは面白い人だと思いました。作曲家にして指揮者という。更に、東京大学大学院物理学専攻博士課程単位取得退学、同総合文化研究科博士課程修了。第1回出光音楽賞受賞・・・著書『バカと東大は使いよう』他。


こういう人が、昨年の日本人4人ノーベル賞受賞をどう分析しているか?早速、借りてきて読むことにしました。

この本の中から、ノーベル賞と原爆の関係について。

湯川博士ノーベル賞は、1949年です。受賞理由は「中間子の存在を予言したこと」。

ところで、この中間子って何でしょう。

私が解説するのは僭越ですが(間違っていたらお許しください)、話の都合上簡単に言いますと、例えばヘリウムの原子核は陽子2個と中性子2個から出来ている。陽子はプラス電荷を持っているから陽子同士は反発するはずなのに、何故ヘリウム原子核の中に同居できるか?核力という電荷の反発力より強い力が働くからです(この核力伝達の担い手が中間子)。この原子の中の力を取り出して爆弾にしたものが、簡単に言えば原爆。

こうした核の理論でノーベル賞を受賞したのが湯川博士です。

原子爆弾開発の「マンハッタン計画」についてはご存知と思います。湯川博士の受賞後、マンハッタン計画に関わった科学者の受賞は10年間封印されました。

湯川さんの受賞の背景には、ノーベル物理学賞選考委員でもある「マンハッタン計画」に責任を持った多くの物理学者の明確な「後悔」と「謝罪」がある。

『二度とこんな過ちは繰り返しません。どうか日本の皆さん、そして日本人科学者の皆さん、私たちが力を合わせて開発した原子爆弾が、軍部の暴走によってあなたたちの国に投下されてしまったことを、許してください。・・・

私たちは日本の科学が世界第一流の水準にあることを承認します。どうか私たちの罪を許してください。二度と過ちは繰り返しませんから。』

これが、湯川受賞にこめられた意味でした。

マンハッタン計画」に参加した物理学者のノーベル賞受賞を見ていきます。

エミリオ・セグレ(59年受賞)マンハッタン計画のリーダーですが、受賞理由は「反陽子の発見」でした。

ユージン・ウィグナー(63年受賞) 原爆製造提案の手紙を米大統領に送った3人の物理学者の1人。「素粒子の理論における対象性の発見」が受賞理由。

リチャード・ファインマン(65年受賞) 核弾頭の基礎計算で最も力を発揮。尚、原爆を具体的に設計した物理学者にノーベル賞が与えられたのは初めて。この受賞と抱き合わせ(というと失礼ですが)で受賞したのは日本の朝永振一郎博士。ノーベル賞財団は、被爆国日本の国民感情に配慮して、ファインマンの受賞に日本人の受賞を組み合わせたと、伊東さんは言う。

ハンス・ベーテ(67年受賞)「恒星内のエネルギー発生過程の解明」つまり太陽がどうやって燃えるかを明らかにした業績で受賞したのですが、「マンハッタン計画」の理論面のチーフ、ユダヤ系ドイツ人です。

ルイス・ウオルター・アルヴァレス(68年受賞)「共鳴状態」と呼ばれる多数の「寿命の短い素粒子」群の発見で受賞しましたが、原爆製造の「マンハッタン計画」で、核爆弾の効果を測定する直接の担当者でした。この年、彼の受賞に対してノーベル財団は、日本に配慮して、川端康成氏に文学賞を送りました。

伊東さんの履歴を尚知りたくて、インターネットを検索しました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%E4%B9%BE

 彼は「日経ビジネスオンライン」に面白い寄稿を連載しています。その中からひとつ紹介しますと。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20080109/144567/