なにが日本経済を停滞させているのか

『なにが日本経済を停滞させているのか』(原田泰+大和総研、11年3月刊、毎日新聞)、日本経済の抱える問題の30論点について、概要と対応策を述べたハンデイ・ブックです。
 興味深い記述をメモすると、
1.「インフレターゲットとは、金融緩和を途中でストップする政策」、つまり、景気回復のため金融緩和する時、インフレになる前に金融緩和を停める目安としてのインフレ率を決めておくこと。」
2. 円高対策としても、金融緩和は確実な効果がある。マネタリーベースを07年1月からみると、アメリカが2.5倍、EUが1.7倍、イギリスが3.5倍、中国が2.2倍、韓国は1.4倍・・・しかし日本は1.1倍、円高は当然である。
3. 日本の一般会計の歳出の中には国債の返済費が含まれている。国債の返済費がいくら大きくても、その分かこの国債を返却しているのだから、政府赤字に入れるべきでない。家計で考えれば、住宅ローンの返済の元本を返したから家計の赤字が増えたなど考える人はいない。
4. リーマンショック前まで、ほとんど財政再建に成功していた。
 基礎的財政収支(純利払いを除く財政収支)が均衡し、債務残高の対GDP比は安定していた。
5. 消費税引き上げによる物価上昇分、年金を引き上げると、高齢者は消費税を負担しないことになり、高齢化率が高くなるほど、消費税増税必要額が大きくなる。高齢者が増えれば、なんらかの形で、年金の減額は必要になる。


 東谷 暁氏の『エコオミストを格付けする』(2009.9.20)は、著者の原田泰氏について。
【原田氏の真骨頂はデータを駆使して、それまでの通説をひっくりかえしてみせるところにある。この数十年はインフレターゲット論を守護し、批判する論者に対する反論を展開するのに原田氏の類稀な能力は発揮されてきた。・・・(しかし)原田氏は「週刊ダイヤモンド」02年5月25日号では財政出動で恐慌脱出はできないと論じていたが、『VOICE』08年10月号では正しい財政出動をしろと薦めている。『週刊エコノミスト』06年10月3日号では対米輸出は2割しかないからアメリカの景気後退は心配ないと述べたが、『世界』09年1月号では対米輸出が激減した影響は大きいと論じた?』7】