家計からみる日本経済

 橘木俊詔格差社会』が面白いと聞き、橘木さんてどういう人?としらべると98年に「日本の経済格差」という本を著し、格差問題に最初の発言をした人らしい。著書のリストをみると04年に「家計からみる日本経済」を岩波新書から出している。この本は面白そうだな、と早速図書館から借りてきました。読んでみると、実に説得力のある文を書く人だと、
感服しました。
 その中から、ひとつだけ紹介します。
【   所得再分配ジニ係数 所得再分配後のジニ係数 再分配(%) 税再分配(%) 社会保障再分配(%)
72年  0.354        0.314    11.4    4.4        5.7
75年  0.375        0.346      7.8    2.9        4.5
   (中略)
99年  0.472        0.381      19.2   1.3        17.1
 このデータの意味は、所得の格差は0.354(72年)から0.381(99年)に拡大された。税金と社会保障給付で格差が縮小されるが、72年の場合、0.354から0.314に0.041縮小され、これは0.354の11.4%に相当し、そのうち税による分4.4%、社会保障による分5.7%の意味です。】
 ジニ係数の意味はご興味があれば以下ご覧ください。
http://www.nihonkaigaku.org/ham/eacoex/100econ/120doms/122dist/1224inc/gini/gini.html
 もう一つ所得税率の変遷のデータがあります。
【86年 最高税率70%から5%きざみで最低10.5%
 89年 最高税率50%から10%きざみで最低10%
(中略)
 99年 最高税率37%、以下30%、20%、10%】
 この二つのデータから読み取れることを下記します。
 第1のデータから
 ①ジニ係数から、格差が一貫して拡大してきたことが分かる。
 ②社会保障給付(主として年金)が増加し、格差の縮小に貢献したが、税による格差縮小効果は少なくなってきた。
 第2のデータから
①一貫して高所得者の税率を減らしてきた。
②このことが(第1のデータにみる)税の再分配効果を減らした。
【わが国の所得税製は過去20年弱、一貫して累進度を低下させる政策政策がとられてきた。この累進度の低下が、再分配所得の格差拡大、すなわち不平等化に寄与したのである。】
 格差は、小泉内閣で拡大したというのでなく、既に20年も前から格差拡大策がとられてきた。
 それは、レーガンサッチャーの経済政策を範としたのかもしれませんが、私には、政府の施策は一貫して米国型の社会構造を範としてきたように、思われてなりません。

追伸:こんな文章が、紹介した本(家計からみる日本経済)にありました。

【年金制度は死亡時期が不確実な引退者の所得保障が最大の目的である。
わが国では60歳から公的年金が支給される(03年時点)が、61歳で死亡した人と90歳で死亡した人の間には、支給額で約3500万円の差がある。・・・
70歳で死亡した人と80歳で死亡した人の間でも約1200万円の差がある。これらの数字は平均的な労働者の年金像から計算したものである。】

定年後の人生は、カネを生み出せないというその一点で「負け組」だと言う人がいます。
そんなことはありません。長生きで、年金を稼げるのです。

みなさん。定年後は、長生きしたものが勝ちです。