文脈力

 『「頭がいい」とは、文脈力である。』(斎藤孝著、角川書店、04年12月刊)という風変わりな題の本を読みました。
 この風変わりな書名が気に入ったのです。
以前、「国語が小学校の教科で最重要!」と書いたことがあります。その折、「何故、国語が最重要か」については説明していませんでしたが、その「説明」がここにありました。
 どう書いてあるか、気に入ったところを抜書きしてみます。
【「頭がいい」というのは、相手の意図とか感情とか理論、その人が何をしたくてどうしてこういっているのかが分かる人、脈絡をぴたっとつかまえられる人です。現代国語というのは、本来、そのための力を鍛えたり伸ばしたり深めたりするための教科であるはずです。ところが、現代国語は誰もが一番勉強しようとしない教科になっているのが現状です。】
【もともと他人である別人格の人間と一緒に暮らすということだけで面倒くさい。でも、みんなその現実を引き受けていく。それが現実を生きるということです。】
【本当の意味での、頭のよさとは、学力でもIQでもなく、現実の社会を生きていくうえでのさまざまな局面における判断や対応のあり方です。】
 以上で述べていることは、「頭がいい」ということは、見たこと、聞いたことの間のつながりが分かる能力 (これが、国語で言うと文脈を知る「文脈力」です。)だということです。それも、直裁簡明な繋がりを見出す能力です。
【物理や数学の世界では、シンプルにすることができる人ほど頭がいいと見なされています。】
 【戦争という手段は、文脈を絡ませようとする努力を放棄したところに起こるのです。(たとえばブッシュ大統領のやりかたを見てますと、イスラム世界という文脈を理解しようという観点が足りない。)】
 「頭がいい」為には、記憶力が重要な役割を果たす。 
 【単に記憶してそのまま再生するだけではなくて、自分の頭を通して再構築して、自分自身の言葉として話したり書いたりするような勉強をもっと重視すべきだと思います。】
【子どもの頃の一つの記憶がずっと心の中に残っていて、今の自分のあり方に結びつく記憶として生きつづけている。・・・記憶の連続性が、自己の一貫性というものを培っている。】
 頭を良くするトレーニングについて
 【「頭がいい」状態を維持拡大して、それを習慣付けるということは、一種のスポーツである。】 
【記憶を定着させる一番のコツは、人に語ること】
【あることを考え続ける、工夫し続ける、その脳の粘着力というか、粘り強さがあると、「頭がいい」状態をキープし、さらに上へと高めていくことができる。】
そして、トレーニングにおいては、今やっていることのねらいを知ることが必要です。
【今何やっているかが誰でも分かるようにするために、道具として「型」を設定する。
 私が「型」について強調する理由は、日本は「型」を大事にする国として世界的に特異な力を発揮してきたと考えるからです。】
 日本文化の「型」についても触れていることが面白い。

 以上、「何故国語が重要か」について示唆の多い本でした。