『格差社会』

 橘木俊詔さんの本、「家計からみる日本経済」に続いて「格差社会」(岩波新書)を読みました。「これはいいな」と思ったこと、全く同感だなと思ったことを記します。

1.社会科学の論文は、こう書くべきだと、以下の点に感服しました。
(卒論にとりかかる前に読めるとよかった)
1.1 データソースの解説から始めていること。
 所得再分配調査(厚生労働省
 家計調査(総務省
 全国消費実体調査(総務省
 賃金構造基本調査(厚生労働省
 それぞれの統計の特質を述べ、どの統計データからデータを得たかを解説している。
1.2「はじめに」で、第1章から第5章まで、どういうことを述べようとしているか、その概要を記し、更に各章の冒頭で、その章の記述内容を述べている。

2.まったくそうだと思いました。
2.1 現在、政治家のかなりの数が2世、3世議員となっています。・・・プロ野球選手にも・・・長嶋一茂氏と野村克典氏は、父親ほどには野球選手の能力には恵まれていませんでした。・・野球選手の場合にはたとえ父親の地位が最初の段階で子どもに有利に働いたとしても、その後の息子の地位は本人の能力と努力次第・・・・・野球の能力が優れているかどうかは、目に見える形ではっきりと判断できるからです。
 野球選手の場合と同じく、親が優秀な政治家であっても、子どもが優秀な政治家とは限りません。にもかかわらず、野球選手と違って、分かりやすい形でその能力を判断することは難しいのです。
2.2 実際には「小さい政府」を実現させているのに、政府の役割をもっと小さくすることが、現在の日本では、声高に主張されています。・・・国民の中でも、その主張に賛成している人は少なくありません。その最大の理由は、政府への不信感ではないかと、私は考えます。すなわち、日本の政府は無駄な支出をやっているという意識が非常に強く存在しているのではないでしょうか。
 無駄な公共事業をどんどん行う、あるいは天下りをはじめ、官僚が甘い汁を吸っている。さらには税金を取るだけ取って国民に還元しない、不正を行うなど、政府に対する不信感が非常に強いのです。

 この本、私の「今年のベストテン」に入りますね。