春歌と「地獄の顔」

以下、久世さんの文章です。
【三つとせ 醜いところに×××××

すっても剃ってもすっても剃っても×××××

四つとせ 余計なところに×××××

すっても剃ってもすっても剃っても×××××

 つい最近、森繁さんとその後の文句を思い出そうと懸命になったが、二人とも記憶力が減退して、九つの《困ったところ》と、十の《とんだところ》以外はどうしても出てこなかった。のり平に訊いておけばよかったと、森繁さんがホロリと泣いた。】

折角ですからついでに、「マイラストソング第三巻」からもう一つ、雑学を教えられましたので紹介。「夜霧のブルース」という章です。

【あの頃は、一つの映画に主題歌が二つというのは、ごく当たり前のことだった。たとえば昭和24年の「青い山脈」には、藤山一郎奈良光枝の「青い山脈」のほかに、双葉あき子の「恋のアマリリス」があって二曲ともヒットしている。ところが「地獄の顔」には、なんと主題歌が四つもあったというから驚く。まず「雨のオランだ坂」がそうで、次がデイック・ミネの「長崎エレジー」である。

 波が歌うよ 長崎の

 港めぐれば石畳

 愛の灯ともす 希望の家に

 サンタマリヤの鐘が鳴る

この歌はあまり知られていない。「地獄の顔」の、もう一つのデイック・ミネの曲の陰に隠れてしまったのである。この映画の第三の主題歌は、それくらいの名曲だったのである。

「夜霧のブルース」というその歌は、島田欣也・大久保徳二郎の「長崎エレジー」のコンビで作られ、戦後の不良少年たちの聖歌のようになり、後に日活で映画がリメイクされたときの歌は石原裕次郎だった。

 青い夜霧に灯影が紅い

 どうせ俺らは ひとり者

 夢の四馬路か 虹口の街か

 ああ 波の音にも 血が騒ぐ

(以下 略)

 映画全盛時代には、主題歌が四つも合った時代があったのですね!