この国のかたち 6

「和を以って貴しと為す」だけではダメなんですね。その意味は、生きていく上で、どうしても守らなくてはならない価値というものがあると思う。その価値よりも,グループの和を優先してはならないということです。寺島実郎さんはこれについて何を語っているか、私の興味を持った点です・
新渡戸稲造が『武士道』を英文で刊行したのが1900年であり、内村鑑三の『代表的日本人』や岡倉天心の『東洋の理想』『茶の本』がやはり英文で発刊されたのもその前後だった。・・・今日、世界中の書店で日本に関する本が置かれた棚を見つめて実感することは、一世紀も前の先人が書いた日本および日本的価値に関する本を超えた本がないということである。】
 まず,日本人に共通の価値というものがあると思われるが,それについて明治の先人の著書を超える書物がないことにふれます。
 そして、日本人の従来の価値観が猛烈な勢いで崩壊しつつある、といいます。
 不祥事に、会社の中から密告があることに触れ【今静かに、そして、ものすごい勢いで崩壊しているのが、この会社主義であり、戦後型秩序を形成していたものの中核である。・・・卑怯・卑劣な匿名の手段で帰属意識の問題を外部で糾弾する風潮がかくも蔓延することは、何かが崩れている査証である。】
【戦後生まれ世代に共通の傾向を抽出すれば、根深い「私生活主義」と「拝金主義」への埋没である。戦前の過剰な国家主義への反発もあって、全体を語ることを避け、己の身辺だけを考える傾向を許容してきたのが、戦後日本であった。それは全体に対して,個の価値を守り抜くという「個人主義」とも異なり,私生活さえ守られればよいという次元での生活保守主義の蔓延であった。】
 ここの処,しびれました。「個人主義」は守るべき個(価値)があって成り立ちます。次の世代に伝えねばならない価値を、私たちは確立しなければなりません。
【根本的には、戦後の日本が「私生活主義」を何よりも中心に置き、私生活を超えた価値を完璧なまでに見失ってきたということなのであろう。】
【無味乾燥な拝金ロボットではなく、人間として生きる価値がこの国にあることを、大人の行き方と社会創造によって示さねばならない。】(おわり)