海馬のはなし(1)

 以下は「海馬」(新潮文庫)のハイライト部分の抜書きです。
【脳の機能を分類していくと、たった二つしかない。
「情報を保存する」と「情報を処理する」。どちらが大切か?「情報を保存する」だ。
何故なら、情報が保存されていないと処理は出来ないから。つまり、記憶がなければ処理もありえない。】
だから【記憶がなければ言葉もしゃべれない。しゃべれなければ思考には制限が出てくる。
 脳の働きのほとんどは記憶で説明できる。ノウハウや成長といったことも、何かをするための方法を記憶することである。】
そして【単なる記憶は「意味記憶」と言いますが、自転車の乗り方など、自分で試してみないと分からないものごとの記憶のことを「方法記憶」と言います。
 意味記憶は”暗記メモリー”、方法記憶は”経験メモリー”と呼んで良い。】
(頭の働きとは、メモリー同士の似た点を探し『つながりの発見』を起こすこと)
【経験メモリーは、実際に試した手順だけを憶える・・・・実行してみたらその分だけ経験メモリーの貯金が増えるし、経験メモリーの貯金が増えたら、また次にやれることが増える。】ために経験メモリーの蓄積は、30歳を超えると爆発的(ベキ乗的に)に増える。
だから、経験の増える30歳以降の方が、頭の働きは良くなる筈です。
 歳をとると、忘れっぽくなるというのは、『子どもの頃に比べて大人はたくさんの知識を頭の中に詰めているから、そのたくさんの中から知識を出すのに時間がかかる。』ということ。
 この【記憶を扱っている部位が、脳の中で海馬と呼ばれているのです。
 海馬は、脳の奥にしまわれています。直径1センチ、長さは5センチぐらいです。
ハリネズミの海馬は脳の半分ぐらいですが、人間ではこんなに小さい。
 私たちは、「海馬って、人間だけにあるわけじゃないんだ。たいしたことない場所だな」とは思いません。
「下等な動物でこれだけ発達してるのなら、生命にとって本質的に重要なんだ」という見方をします。
 脳の神経細胞は生まれた時の数がいちばん多くて、あとはどんどん減っていく一方だと言われています。
実は、海馬では細胞が次々と生み出される。】
 海馬は脳の記憶機能にどう役立っているか?
【海馬そのものの中に記憶が蓄えられるわけではないのですが、海馬は情報の仕分け(記憶しておくべき情報と記憶しなくて良い情報の仕分け。つまり、生存にその記憶が必要かどうか判断して仕分ける)という役割を担っている・・・海馬の神経細胞の数が多ければ多いほど、たくさんの情報を処理できる。】
 海馬がなくなると、どうなるか?
 新たな記憶を創造出来なくなる。5分ぐらいは覚えるが5分経つと忘れる。(続く)