海馬のはなし(2)

 【海馬はもちろん起きている時にも十分活動しているが寝ている時に、ものすごく活動している。眠っている間に夢を作り出します。海馬は、夢の間に起きていたときの記憶を引き出して、情報の整理をする。
 夢は「記憶の再生」ですから、夢には「記憶にあるもの」しか出ない。

 身体の細胞は入れ替わりが非常に早いものです。生涯に何回生まれ変わるかわからない。ところが、脳だけは本来は入れ替わってはいけない。違う人間になってしまうから。

 しかし、脳の中で唯一入れ替わる場所がある。海馬です。ぼくはその現象に対して、「海馬は記憶を作るだけのところであって、保存しておくところではないから、入れ替わった方が良い」という仮説を立てている。
 記憶を作る鋳型をつくるのが海馬。
 鋳型は別のところ(別の記憶の保存場所)に押される。鋳型が永久にのこると邪魔だか
ら、記憶というハンコを押したら鋳型の原版は捨てて、新しい鋳型をつくる準備をする。】

【脳の記憶の仕方で、大切な特色は”可塑性”です。
 可塑性とは、粘土みたいにかたちが変わること。脳は変化したものを変化したままにしておくという・・・まさにそれこそが記憶です。
 つまり、いったんある情報を受け入れて、それに対応するように回路がつながると、それをそのまま残してしまう。
(可塑性が多いということは、環境変化に対応しやすい。
 そして、この可塑性は動物の中でも人間の脳がいちばん沢山与えられている)
 換言すると、可塑性とはつまり(変化したかたちで)「記憶できるということ」なんです。】

 一方、 脳は「可塑性」と同時に「頑固さ」があります。
 脳の頑固さとは「一回分類(情報のつながりを決める)してしまうと、それ以外の尺度では分類できなくなってしまう」ことです。
”経験の増える30歳以降の方が、頭の働きは良くなる筈です。”と述べました。
しかし、例えば数学の世界などで、20代でないと新しい学説の創造は出来ないなどといわれます。
事実とすれば、脳の「頑固さ」が邪魔するのでは?(続く)