ブランドと100円ショップ

 堺屋太一さんの「ブランドと100円ショップ」という本を読んでいます。01年11月から04年11月まで、週刊朝日に連載された時評を編集したもので、刊行は3月30日です。
 中に『強運(小泉)内閣五つの「大罪」』なる章がありました。(1年半前の文です。)

1.不況常住観で気力が失せる。
 不況を克服する気力の喪失は、不況そのものよりも恐ろしい。
 森内閣は、景気振興を主とする補正予算を組み、IT基本法など新規産業の開発に努めた。01年度の予算編成に当っては、総理大臣特別枠を設けて効果的な予算配分に努めた。そうした努力が充分な成果を挙げたとはいえないにしろ、この時点までは「不況は悪、克服しなければならぬ」という認識があった。
 ところが01年4月に発足した小泉内閣は、景気の低迷にはあまり関心を示さない・・・
2.官僚主導に逆戻り
 りそな金融グループの経営が行き詰まり、2兆3千億円以上の公的資金を投入して実質国有化せざるを得なくなったのは、小渕金融改革から実質的な改善策を官民ともに怠ってきたことの帰結。
 官僚による厳格な監査など、小泉内閣がしてきたことは、金融リスクの国有化、いわば社会主義政策への逆戻りである。
 私たちの幼い頃は、誰もが日本の高級軍人は優秀だと信じていた。・・・しかし、太平洋戦争では、日本の将軍、提督は優秀ではなかった。・・・今日の官僚にもその危険がある。
3.外交基本概念の不在
 東側社会主義陣営が崩壊し、冷戦構造が消滅した途端に、アメリカは日本に構造協議を求めてきた。
 「西側陣営に属して経済大国・軍事小国を目指す」という外交コンセプトが(冷戦終結後)破綻した。
 世界は、日本が官僚主導で経済大国を目指すのを認めなくなった。同時に軍事小国であることをゆるされなくなった。
 この後、外務官僚が持ち出した外交目標は「北方領土」と安保の「常任理事国入り」。これらは外交コンセプトと言えるものではない。
4.格好優先の劇場主義
 これは説明の必要なしですね。
5.「不況名君」の自己陶酔
 小泉首相は徳川将軍に例えると、最後の将軍「慶喜」と私は思っていましたが、堺屋さんは八代将軍吉宗に例えています。改革と言う名で、金融引き締めと総需要抑制策をとったからです。官僚たちは、不況が続けば権限が強まることに気付きだした。これが高ずると「不況将軍の独善」に陥らぬとも限らない。

 ざっとこんな具合ですが、小渕・森内閣で経企庁長官を務めた堺屋さん。自分の政策と全く逆の方針をとりつづける小泉・竹中ラインへの不信が強いみたいです。