続・ブランドと100円ショップ

 『ブランドと100円ショップ』読書感想の続きです。
 中国などアジア諸国の経済発展について、面白い記述がありました。
発展途上国が工業化するには、三つの障壁がある。第一は資金の不足。大規模な工場を作り、流通施設を広めるのには巨額の資金が要る。日本は明治以来3代にわたり、郵便貯金や銀行預金を奨励し、生命保険を広めて、やっとそれが出来た。
 ところが、世界経済がグローバル化した80年代以降は、そんな苦労は必要なくなった。
有望な事業計画をつくれば、外国資本を引き込むことができる。中国の工業化も、まずは経済特区への外資導入から始まっている。
 第二は市場だ。近代工業を興すのには、大工場でつくる規格化した工業製品が大量に売れる市場が要る。そのために日本では、郵便と通信・放送を普及させて全国に情報を流し、鉄道を敷いて輸送を可能にし、学校教育を広め、全国民が工業製品を買う市場にした。
 80年代に工業化したアジア諸国にはその必要もなかった。製造した工業製品は外国、特に北米市場に輸出できた。アジア諸国では、まず輸出、それによって豊かになったことで国内の市場が育ちだした。
 第三は技能者。近代工業を普及させるには現場で働く中堅技能者が大量に要る。戦後、多くの新興独立国や産油国が、巨費を投じて工場を造っても工業化が進まなかったのは、現場で働く中堅技能者が足りなかったからだ。日本は工業化の過程で全国に工業学校、商業学校を設けて中堅技能者を大量に育てた。
 だが、80年代のアジヤ諸国はその点でも苦労がなかった。コンピュータ制御技術の発達で、中堅技能者がそれほど多くは要らなくなったからだ。】

 第一の外国資本の取り入れは、経済のグローバル化、国際間の資金の往来の活発化によって可能になりました。何故、資金の往来が活発になったか?というと米国が貿易収支の赤字を累積し、世界中にドルを溢れ出したからです。ドルを持った人は、昔と違って、金の裏づけがありませんから、ドルの価値が下がるのが心配で、次々とドルを他の資産に投資したからです。
 第二の北米が発展途上国の市場になったのは、勿論、米国人が稼ぎ以上に消費してくれたからです。
 第三のコンピュータ制御技術の発展にも米国の影響力は大です。

 こうしてみると、あらためて世界経済における米国の力を感じますが、その最大の源泉は、ドルが世界通貨になっていること。そして、世界通貨でありつづけるのは、ドルが石油を取引する通貨であることが原因と思います。イラクへの軍事介入の真因は、ここにあると思います。