バイオ燃料

NHKの「クローズアップ現代」が3日、「バイオ燃料と食料高騰」を取り上げていました。
たまたま読んでいた『「お金』崩壊」(青木秀和著、集英社新書、4月22日刊)という面白い題の本に、この問題が記述されていました。

【2007年1月、ブッシュ大統領は年頭教書演説で、ガソリン消費量を今後10年間で20%削減するとの目標を掲げた。一瞬耳を疑った。・・・よく聞くと・・・

 単純な排出削減ではなく、年間350億ガロン分、10年間で3500億ガロン分のガソリンを、バイオエタノールに代えるという目論見だった。

 こんなものは、私にいわせれば、やらないほうがマシの「最低の政策」だ。

 バイオエタノールは・・・植物由来の燃料だから、カーボン・ニュートラル(二酸化炭素を増やさない)な燃料であることは間違いない。問題はその作られ方だ。

 全米の耕地の約20%に植えられているハイブリッド・コーン(二つの異なった系統を交配した一代雑種トウモロコシ)は、1ブッシェル(25.4kg)当り、2分の1ガロン以上の石油を消費してつくられている。

 石油の助けを借りなければ生産できない食物は「ペトロフード」と呼ばれる。ハイブリッド・コーンはペトロフードなのである。

ワシントン・ポスト紙」は「トウモロコシはわれわれの問題を解決しない」と題して、その問題点を次のように正確に指摘した。

「トウモロコシを原料にしたエタノールは、生産過程で大量の化石燃料を使用するため、新エネルギー創出は1ガロン当り20%にとどまる。温室効果ガスの排出量も同量のガソリンを消費した場合より15%少ないだけだ。トウモロコシ原料よりも効率性が優れたブラジル産の大豆原料エタノールも、増産で熱帯雨林が伐採されれば、結果として、二酸化炭素排出量の増大を招く」・・・

 トウモロコシに生じたバイオエタノール特需は、当然、食用や飼料用とバッテングする。供給は極端に逼迫し、そこへヘッジファンドなど投機マネーが加わって、トウモロコシの市場価格は6ヶ月の間に2倍以上に跳ね上がったのである。

それは、大豆市況へと飛び火する。これまでトウモロコシ農家は、連作障害を避けるためトウモロコシと大豆を交互に作付けしていた。そこへ、バイオエタノール用に特化した連作可能な遺伝子組み換えトウモロコシの新種が投入されたのである。これによって、大豆からトウモロコシへ作付け転換する農家が急増し、大豆の市場価格も急騰した。・・・

 さらに、バイオエタノールブームはブラジルに持ち込まれる。バイオエタノールの輸出増を見込んで、オレンジやグレープフルーツからサトウキビに作付け転換する農家が相次いだのである。その結果、これらの果汁の生産量が急落して市場価格が上がる。この煽りを受けた日本の大手乳業メーカーや飲料メーカーは、次々に果汁飲料の値上げを余儀なくされた。 等々・・】

 昔は、米国大統領が愚かであれば米国民が被害を受けたが、今や米国民だけでなく、全世界が困窮する。これが、グローバル化経済の“不都合な真実”です。