死因不明社会

海堂 尊(たける)という小説家(兼医師)がいます。

今、週刊朝日に連載小説を載せていますが、これがなかなか面白いので興味を持ちました。「チーム・バチスタの栄光」なる小説が評判になっていました。私は未だ読んでいませんが、海堂さんの作品です。

最近、彼の「死因不明社会」(講談社ブルーバックス)が評判になっているので、買ってきました。

白鳥圭輔というチーム・バチスタに登場する人物(厚労省役人)が、これまた架空の新聞記者のインタヴューに答えるという形式で、日本社会が「死因不明社会」になっていることを縷々と述べています。

人が死ぬと、医師が死亡診断書または死体検案書を書くことになっている。その際、死因を解剖で確認することはきわめて少ない(2%で先進国中最低)。大部分は外観を見るだけで診断書が書かれているので、実は本当の死因は分からない。

一番分かりやすい例は、昨年犬山の相撲部屋で起きた時太山死傷事件。危うく愛知県で火葬されるところだったが、親の意向により新潟大学で解剖され、事件が明らかになった。

犯罪防止という面だけでなく、医学の進歩という面で、医師の採った治療法が正しかったかどうか、死因を確認する(死亡時医学検索)必要があるのです。

しかし、解剖をすべて実施することは大変です。お金も人手もかかるから。

そこで、近年急速に発展したコンピュータ技術を用いて、「CTやMRIを死体に適用し(これをAI(Autopsy Imaging)という)、犯罪の疑いがあるような場合のみ解剖すれば良い」と著者は主張する。

まぁこんな話が展開されるのですが、医学に関連する余談が面白い。

著者も厚労省の政策にはかなり批判的で・・・

厚生労働省がシステム作りに失敗した例ですよね。新医療研修制度は大学病院を壊し、地方大学が支えていた地方医療制度を崩壊させましたし、関連省庁である社会保険庁はあまりのひどさに組織解体されました。鳴り物入りで立ち上げた介護保険は、介護現場のスタッフから生活が立ち行かないという悲鳴があがっています。・・・』

CTやMRIなど言葉はよく聞きますが、その技術的内容はよく知らなかったのですが、詳しく教えてくれました。

「CTは、生体にさまざまな方向から幅の狭いX線ビームを発射する。そして透過したX線を検出して、断面内におけるX線の吸収の度合いの空間分布をコンピュータで計算し、画像化する。

 1973年英国のハウンズフィールド等が開発(1979年ノーベル生理学・医学賞)。最近では、ヘリカルCTの検出器の多列化が進んだMDCT(Multidetector low CT)という機種も開発され、臨床に導入されている。MDCTを用いれば、スライス厚0.5mmから1.25mmという高分解能の画像を短時間で取得できる。」等々。