2012今年の10冊

 印象に残った「今年の10冊」を下記します(順不同)。
原発のコスト
大島堅一著、岩波新書です。
原子力がなくても、日本は、電気供給になんの問題なく対応することは可能。ただ、九電力地域独占体制を改めることと、新しいエネルギー開発に努力すれば良いだけと考えます。
 それにしても、原発のコストを、原発立地への交付金やバックエンド事業(使用済み燃料の処理廃棄)の費用、事故が生じた場合の補償費用(損害額×発生確率)を加えて考えると、絶対に採算にのらない。その原子力発電が、何故国策として推進されたのか?
 その国策決定過程には民主的手続きはあったのか?そもそも、民主主義とは何であったろうか、まで考えさせられました。この本(「原子力のコスト」:岩波新書)は好著です。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120218
● 生物学的文明論(本川達男著、10年6月刊新潮新書
動物においては、時間の速度と体重当りの消費エネルギーが比例しています。 
体重当りのエネルギー消費量は、赤ん坊は非常に大きく、成長するにしたがって、20歳まで急速に減っていき、20歳を過ぎてからは、ゆるやかに減り続けていきます。これは、子どもの時間は早く、老人の時間はゆっくりだということを意味するでしょう。老人のエネルギー消費量は、子どもの2.5分の1ですから、老人の時間は子どもの時間の2.5倍ゆっくりだということです。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120123

http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120125
● 不愉快な現実(孫崎亨(うける)著、講談社新書2012年3月)
米軍にとっての在日米軍基地の最大の利点は日本政府の財政負担である。日本政府は「思いやり予算」という名目で、基地経費の75%から80%近くまでを補填している。米国の財政状況が厳しい折、これだけ魅力のある場所はない。たとえば普天間基地にいる海兵隊の米国内の基地は、財政負担の減少により、補修が十分行き届かず荒れた所も出ている。海兵隊が存続する限り、日本に基地を持つことが最も経済的に効率がよい。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120727
●  奇跡の脳2012年4月、新潮文庫、ジル・ボルト・テイラー著
「のうそっちゅうになっちゃったんだわ!のうそっちゅうがおきてる!」次の瞬間、テイラーさんの心にひらめいたのは、「あぁ、なんてスゴイことなの!」「これまでなんにんのがくしゃが、脳の機能とそれが失われていくさまを、うちがわからけんきゅうしたことがあるっていうの」科学者という生き方のすさまじさが現れている。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120506
● 失われた30年 NHK新書、金子勝神野直彦共著 12年6月刊
ここ数年来、疑問に思っていたことがありました。
日本の社会と経済は、明治以後、そして終戦以後も、欧米先進国の後を追ってきました。
ところがバブルの崩壊と金融危機は、日本が欧米先進国に先立って体験しました。
日本はこれに関しては、世界の最先端を行きました。いつから、そしてどうして日本は、世界の先頭を走るようになったのか?
そのヒントになる本を見つけました。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20120826
● 世界経済危機 日本の罪と罰野口悠紀雄著、08年12月刊ダイヤモンド社
【「アメリカの投資銀行モデルは崩壊した」と言われる。たしかに「巨額の借り入れで投資額を膨らませてリスクのある対象に投資する」という90年代以降の投資銀行モデルは破綻した。しかし、その反面で、日本の輸出立国モデルも破綻したのだ。この二つは、同じ現象の表と裏である。】
【円・キャリー取引でアメリカに流入した資金が、サブプライム・ローン関連金融商品に回った可能性は十分にある。】
【日本はデフレ脱却と称して異常な低金利政策を継続した。その結果、世界経済にゆがみを与えるような事態を招いてしまった。】
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120306
● ケインズハイエク松原隆一郎著、11年12月刊講談社新書、)
 野田政権のもとで関税の完全撤廃につながるようなTPPに日本が参加することになったが、製造業を中心とする過剰な輸出が中長期的に円高をもたらしているのだとすれば、それが同じ円で決済せざるをえない他の産業や労働の対外競争力を低下させる原因となっている。ハイエクならば、貿易自由化という以上は同時に貨幣発行の民営化まで踏み込まなければならないと主張する(農業と製造業とは別の通貨を使う)のではないか(1976:貨幣発行自由化論)。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120303
●震災復興 欺瞞の構図(新潮新書、12年3月刊)
【東日本の復興のためには19~23兆円の予算が必要で、それを賄う10.5兆円の増税が必要だと政府は考え、そのための復興財源法を成立させている。】
 しかし、本当に増税が必要だったのか?
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120419
● TPP亡国論(中野剛史著、11年3月集英社新書
TPPはアメリカの輸出を増やす(特に日本に対して)米国の戦略の一環であり、日本の輸出を増やすものではない。今の状態でTPPに参加すると、日本は、関税は勿論、社会的・文化的に必要な規制や慣行まで、開国の名の下に撤廃せざるを得なくなり、デフレの悪化や格差の拡大など様々な弊害が発生する。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120618
(以下は、この本の続編ともいうべき本です。
● レジーム・チェンジ(NHK新書、12・.03・30刊行)。筆者は、中野剛志・
橋本内閣も小泉内閣もそれ以後の政権も、インフレに対応する政策は実行しても、デフレへの有効な対応策はとってこなかった。TPPへの参加も、安価な農産品の流入外資系企業の参入による競争の激化で、国内に強力なデフレ圧力を発生させるであろう。
『金融緩和によって増大したマネーは、必ずしも国内の投資や消費に廻らない』
だから、金融緩和は、国債発行による公共投資の拡大とセットでないと、効果はない。)
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120601
● 数学による思考のレッスン(栗田哲也著、ちくま新書2012年8月)
著者の経歴がユニークである。【1961年生まれ、東大文学部中退、数学関連の予備校、塾、出版社に在役。93年より数学オリンピックを目指す学生のための駿台英才セミナーの講師を務める。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20121018