『5つの謎からわかる宇宙』

荒船良孝著、平凡社新書、2013年12月は、5つの謎を解説することで、現在の素粒子論と宇宙研究の最先端を語る本でした。
著者は、1973年生まれのサイエンスライターで、保育士でもある。
 第一の謎:赤方偏移は宇宙が膨張していることを示す。時間を逆戻しすると、ビッグバンがあったことになる。ビッグバンの名残が「宇宙背景放射」と名付けられたマイクロ波である。この観測から宇宙の成分がわかる。
 観測できる物質は4%、ダークマターが23%、ダークエネルギーが73%であることがわかった。これが第一の謎である。
1927年オランダの天文学者ヤン・オールトが、太陽系から300光年以内にある星を観測して、星が動く速さから重さを割り出してみると、星の明るさから計算した重さと数値が合わない。動く速さから割り出した方が1.6倍も重かった。
 宇宙空間の中で、どの場所で、どのくらい重力レンズ効果が観測できるかを調べれば、ダークマターがどこにあるかを浮かび上がらせることが出来、ダークマタ―の地図が作られるようになった。
 調べてみると、面白いことが分かった。宇宙が誕生して少しすると、この宇宙で、水素やヘリウムが作られるようになる。この宇宙にダークマターがなければ水素やヘリウムが集まることができなかった。
 第二の謎;ダークマターは、目で見ることはもちろん、赤外線やX線という他の波長の電磁波でも見ることが出来ない。電気をおびてもいないし、他のものとぶつかっても何の反応もしないで通り抜けてしまう。しかも、この宇宙に大量に存在している。ダークマターはこの宇宙の23%を占めているのだ。スーパーカミオカンデは、ダークマターの実態を素粒子とみて、そのキャッチに挑戦している。
 第2の謎:ダークエネルギー
ビッグバン以降、宇宙は勢いよく膨張していたが、ある時点から、だんだんとその勢いが緩やかになってきた。このまま膨張速度が落ちていくのかと思った矢先、突然宇宙の膨張する速度が上がったのだ。これは下り坂の途中にあったボールが、誰も触らないのに上がってしまうくらい不思議なことだ。ふつうなら重力に引っ張られて転がり落ちてしまうのに、ボールがひとりでに上がることがあるだろうか。この観測結果から、宇宙には重力に対抗してボールを押しあげる反発力のエネルギーがある
第3の謎:CP対称性の破れ(益川・小林理論)
ビッグバン以後、物質はどのようにして形成されたか。我々の体は百種類くらいの原子でできていると思っていたが、もっと突き詰めて考えていくと、アップクオーク、ダウンクオーク、電子の三つの粒子からできていることになる。この三つの粒子は物質の根本的な粒子ということから「素」粒子と言われている。
 ビッグバンによって素粒子反粒子が10億個誕生していたとすると、今生き残っている素粒子はその中のたった二個分らしい。残りの素粒子はどこへ行った?反粒子とぶつかって消滅してしまった。ここで重要なことは素粒子が二個生き残るために、10億個あった反粒子の中の一個が素粒子に変化したということ。
第5の謎:ニュートリノ
我々が目にする物質は宇宙の中では4%。ニュートリノは0.1%〜1.5%。しかし測定されたエネルギーを粒子の数に換算すると、ニュートリノの数が一番多い。ニュートリノ粒子の存在量は1?立法辺り300個もある。宇宙のどこに行っても、角砂糖一個分のスペースに300個もニュートリノがあることになる。ちなみに陽子や中性子の粒子はニュートイノの10億分の1しかない。
解明を待たれる謎;ヒッグス粒子素粒子は力も作る。
 重力、電磁気力、強い力、弱い力、宇宙の中で働く力は4種類。これらの力を伝えるのも素粒子(ボゾン)だ。素粒子が力を伝えることを最初に提起した離理論が湯川理論・
 重力を伝える素粒子ヒッグス粒子である。
重力波の観測は、相対性理論の正しさを確認することになる。
重力波が観測できれば、電磁波では見ることの出来ない宇宙誕生38万年後より前の世界を直接観測できるかもしれない。理論上は、重力波を使えば誕生まもない頃までさかのぼることが出来る。というのも、インフレ―シヨン理論の中で、宇宙最古の波として重力波の存在が予言されているからだ。