いのち

 寒い日が続きますね。
 『いのち』(文春新書)という本を読みました。ノンフィクシヨンライターの最相葉月
さんが、PR誌「遊歩人」に連載した生命科学に関する対談を編集したもの。
(最相さんは生命科学のホームページを主宰されてみえます。
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/main.html
興味のある方はどうぞ)
以下同書から、印象に残った発言の一部を紹介します。
最初は、鷲田清一さん(哲学者)の「あるもの(無生物)」は統御できるが、「いるもの(生き物)」は統御不可能という話。
【子供を育てると一番よくわかるんだけれど、こっちが思うようにしようと思っても絶対だめ。期待が過剰だから裏切り過剰になる。だからリアルって何かというと、自分の周りのものは思いどおりにならないということを思い知らされる経験だと思うのです。夫婦だってそうだね。愛し合って生きようと思ったのに、どうしてここまで一言一言がぎりぎり気に障るんだか(笑)。】
 次に、般若心教をご研究の生物学者、柳沢桂子さん。
【わたしは、人間とは、受精した瞬間から人間だと思っています。区切ることなどできない。
 私達は両親の生殖細胞から生まれたわけですが、生殖細胞は38億年のあいだ、一度も途切れることなく奇跡に奇跡を重ねてDNAをつないできたのです。・・・そう考えたら、これが自分のものだなんてとてもいえないでしょう。
 病気になったことて変わったのは、死に自己決定権はないと思うようになったことですね。・・・意識がないのに人工呼吸器をつけても意味がないとか、医療費の無駄じゃないかと思ったこともありましたが、今は考えが変わりました。
 私は家族を信じようと思います。ですから、恐れも何もないんです。ただひとつ、私の一番大切な仕事は、主人を先に片付けちゃうことだと思ってるんですね(笑)】

 コンピュータを日常的に使うことが、人間の大事な機能を退化させる恐れはないか?
考えさせられる発言。
【人類が犯した20世紀最大の過ちというのは何かというと、やはり、僕は社会主義だと思うんですね。社会主義で成功した話は一つもないです。22世紀初頭には、多くの人が、コンピュータの発展が21世紀に人類が犯した一番大きな過ちだというでしょうね。そういう中に、遺伝子組み替えやクローンなどが入らないように希望します。−−−荻巣樹徳(植物学者)】

 宇宙空間の実験で、地上の「生きもの」を探求している宇宙生物学者。
【すごく分かりやすい話にしてしまうと、人間って、自分の体重を支えるための筋肉が足や腰にくっついているわけでしょう。それで立っていられるわけですね。でも、無重力だったら、自分の体重を足で支えなくてもいいわけじゃないですか。だから、筋肉が弱くなってしまうとか、骨が弱くなってしまうという問題はあるんです。そうすると、形が変わる可能性がありますよね。からだの。−−黒谷明美