ネットの「向こう側」と「こちら側」

 「ウェブ進化論」(梅田望夫著)という本を読んでいたら、こんな記述がありました。
 以下、一寸長くて恐縮ですが、紹介させてください。
【日本の携帯電話とブロードバンドのインフラは、ほぼ世界一の水準にある。
光ファイバー接続でインターネットを家庭から安く使える」なんて話を米国人にすれば、憧れのまなざしで日本を見つめる。インフラ面ではもう日米大逆転が起きてしまった。】
 確かにそうですね。5〜6年前、インターネット料金が高くつくことを嘆いたメールを送信したことがありますが、事態はまったく変わりました。現に、小生はKDDIの「光ネット」を契約していますが、24時間使い放しでネット代は月額3400円、愚息と割り勘していますから月1700円です。
 【シリコンバレーに赴任したばかりの25歳の日本企業駐在員がこんな感想をもらした。
「米国って日本よりずっと遅れているのに、インターネットの中はすごいんですねぇ。
米国の底力を感じます。ショックでした」】
 米国は日本より遅れているという感覚も驚きですが、これはインターネットのインフラと、筆者の用語で言うと、ネットの「こちら側」の話。ネットの「向こう側」は、米国の底力を感ずるというのです。
 筆者は、何が「ネットの向こう側」で、何が「ネットのこちら側」と言うのか、是非聞いて頂きたく、このキイを叩いています。
 「ネットのこちら側」とは、PCとかケイタイとかカーナビとか、それを使ってインターネットにアクセスするシステムで、この面では日本は世界の最先端です。
 一方、「ネットの向こう側」とは、インターネットにアクセスした後で使うプロバイダーやネット業のシステム、例えばグーグルの検索システムはその代表例です。
この領域は米国の独壇場です。

 【1995年秋、ネットワーク・コンピュータ(NCと記す)という構想が提唱された。
NCとは、ハードデイスクを持たないPCのことで、この新しいコンピューテイング・スタイルでは、インターネットのこちら側に情報を蓄積する機能は不必要になる。情報はすべてインターネットの「向こう側」に持てばよい】つまり【ネットワークが高速化していくと、PC一台の中で情報をやり取りする速度(HDへのアクセス速度)も、ネットワークを介して情報をやり取りする速度もほぼ同じになる。】と考えたのです。
 しかし、これは95年当時の技術では無理でした。それが、10年後の05年、
【今や「こちら側」に置いた情報を「こちら側」で処理するスタイルよりも、「向こう側」に置かれた情報を「向こう側」に置かれたシステムで処理する方が高性能かつ合理的だというコンセンサスが生まれつつある】そうです。

 【「こちら側」と「向こう側」を考える上で象徴的だったのは、04年米国IT産業二大ニュースの鮮やかな対比だ。グーグルの株式公開(8月)と、IBMのパソコン事業売却(12月)である。
 IBMのパソコン事業売却額が2000億円にも満たなかった一方、・・・グーグルの株式時価総額は公開直後に約3兆円。】
【付加価値が順次「向こう側」にシフトしていき、「こちら側」のモノは日用品になる。・・・中国で作って世界に安く供給してくれば良い、というのが、米国が描くIT
産業の将来像だ。】
 【04年3月31日、グーグルはGメールという無料電子メールサービスへの参入を
発表した。】
【電子メールを保存するためのスペースとして、ユーザー一人ずつに1ギガバイト
いう巨大ストレージを、ネットの「向こう側」に無償で用意すると発表した。】(続く)