「ぼくが医者をやめた理由」

という本を読みました。

この本、意外に拾い物でした。先日、博多に泊まった夜、ホテルの近くを散策したら、古本屋のチェーン店があったのでのぞいていて、文庫本の棚に見つけたものです。

「これ、読んでみようか」と¥250払って買ってきました。

 書名に記憶があったのです。「10年くらい前、一寸評判になった本じゃない」と思ったのですが、ホテルに戻って「あとがき」を読むと、最初の刊行が88年、93年平凡社ライブラリーで刊行され、98年に角川文庫の一冊になりました。

 一寸前とおもったのですが、もう18年も前だったのです。

 著者は永井明といい、1947年広島県生まれ、神奈川県立病院内科部長のあと執筆活動に入ったそうです。

 本の内容は、著者が新人医師として勤務したときの体験を、たんたんと、ユーモアある語り口で綴ったものです。

 私が面白いと思った理由は、「医師とつき合う心構え」といったものを教えてくれるからです。

「医師とつき合う」と大上段に振りかぶった章はありませんが、読んでいると、「医師とつき合う」ことを、おのづから考えさせられます。

 人間は、最後には大部分の人が、医師のお世話になって、あの世に旅立ちます。

ですから、人生の知恵として「医師とつき合い方」を知っておくことは大事だと思います。

一箇所だけ同書から紹介しましょう

『医者にとって、肺がん、それもある程度以上に振興した肺がんの診断をつけるということは、「これから先、あなたには何もできませんよ」と言われるようなものだ。平ったく言えば、医者は用なしということだ。いくら威張ってみたところで、効くクスリあっての、切れるメスあっての医者である。その両方が使えないとなると、もうお手上げである。』

 10数年前、親しい友人が肺がんで亡くなったことを思い起こしました。不治の病になった時、医者に宗教者の役割は期待できないのだと、読みながら思いました。

「ぼくが医者をやめた理由」という書名を覚えておかれて、機会があった時、読まれること、お勧めします。