ユーロランドの経済学

 浜紀子さんの著作に関心をもち、図書館で「ユーロランドの経済学」(01年1月刊行)を借りてきました。
 いささか、データが古い憾みはありますが、最近のユーロ高から、改めてユーロを見直したいという思いには答えてくれました。

 EU幹部にはお気に召さない言い方のようですが、「ユーロランド」と言う言葉が面白いですね。通貨統合のテーマパークという意味。正式には「ユーロ・ゾーン」で統一されるべきですが、人々には「ユーロランド」が実感を現しているようです。日常性からの脱却のため遊びに行くのがデイズニーランド、不思議の国は「ワンダーランド」というように。

 ユーロは、発足当時つるべ落としのユーロ安に見舞われました。これについて、筆者は分析します。

 【ユーロ導入とグローバル化の進展による競争激化に対応すべく、ユーロランドの企業家たちがむしろユーロランドの圏外で生産拠点を求め、技術力強化への可能性を模索した。99年には直接投資を中心とするユーロ通貨圏からの対外資本流失が前年に比べて大きく伸び、2000年に入ってからもその勢いは衰えなかった。
 新しい経済の風が力強く吹けば吹くほど、古い政治がその行く手を阻もうとする。国境を越えた合併話に政府が横槍を入れたり、グローバル競争への対応を後押しする構造改変が立ち遅れたり・・・

 更に、ドルの先行きが危うそうだと市場がみれば、取りあえずの資金の一時預かり場としてユーロが買われる。・・・だがやっぱりドルが魅力的だとなれば、ユーロランドに暫定駐車していた資金はまたたく間にユーロ離れしてしまう。漁夫の利を得る時もあるが、一転して身に覚えなき貧乏くじを引く。新参者のユーロにはそのような自己決定力の欠如が見られる。】

 更に、筆者はグローバル化とEC域内の税制について
【多くの国で税金は人に重く、カネに軽くなる傾向がある。多少の重税を課しても逃げていく確率の低い人間たちからは、然るべくたくさん税金を取る。だが、フットワークの軽い投資資金に対しては、なるべく税金を低くして出ていかれないようにする。】と述べる。

 小泉内閣以後の税制改革を言っているみたいです。