再学習「生物と無生物」

 昨年のベストセラー「生物と無生物のあいだ」を再勉強してみました。以前、読んで感想をメールしたものですが、再読してみると、新しい感想が得られました。
 以前の感想は、
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20070714
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20070715
 今回、感じたことは、生物の「輪廻」と「時間」です。
 この本の結論は『すべての原子は生命体の中を通り抜けているのである。』 でした。
 つまり、人間(動物も同じですが)の体を形作る細胞は、常に、古い細胞は分解され、新しく作られた細胞が入れ替わっている。細胞を作る分子のレベルで見ると、分子も常に入れ替わっているから、あたかも川の流れのようで、方丈記に述べる「往く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」の世界です。
 この生物学理論を発見したのは、ルドルフ・シェーンハイマーというユダヤ人の学者です。ナチスを逃れてアメリカに渡った科学者ですが、43歳の若さで自殺しました。著者の福岡さんによると、20世紀の科学の発見の中で、この理論の発見(1937)は、アインシュタイン相対性理論と並ぶものだそうです。
 説明を読んで、仏教で言う「輪廻」を思い出しました。輪廻は、人間は死後、生前の行為により人、あるいは動物に生まれ変わるという信仰ですが、この理論では、死後でなくとも、人間の体を作る分子が、流れ流れて他の生き物の分子になることもある。
 もう一つ、この本で語っていることは、生物にとっての「時間」です。生命とは、テレビのような機械ではない。機械なら、ある部品を取り替えても、動く。しかし、生き物のある細胞(体の部分)を別の細胞に交換できるか?生き物の部分(細胞)は、生まれた時からその周辺と、情報を交換しながら周辺から要求される機能を果たしている。それが、その部分が持つ歴史、換言すると、生き物の持つ「時間」なのです。生き物の部品を変えると、異なる時間を持つ部品が入ることになる。

 読み終わった時、同じ著者の「もう牛を食べても安心か」を読みたくなって、もう一度読み直した。こちらは、3年前に読んだ本です。3年前に書いたブログは、05/03/03〜05/03/05まで、以下のURLです。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20050303
 単に食品衛生の問題に留まらず、現代生物学のあらゆる分野(時には哲学かな?の範囲まで)述べています。狂牛病という問題の背後に、考究すべきこれだけ広い範囲の学問があるのだ。と、知らされます。
再読して、2冊で共通に取りあげている学者、シェーンハイマーを再評価しました。