戦争する脳2

 PTSD(外傷後ストレス症候群、ヴェトナム戦争帰還兵に高い頻度で出現した)と自殺者の関連についてもこう述べています。
【1998年に、それまでは年間2万人程度であった自殺者が、3万人まで跳ね上がって、すでに10年近くが経過している。つまり、1万人のカジュアリテイ(この場合は戦死者数)が増えたままになっている社会に我々は生きている。
 東京の真ん中で開業している精神科医仲間が、昨年12月30日の夜遅くまで診療所を開いていた時の経験について語ってくれた。その時は、戦争、あるいは大災害、そのほか海外での邦人がさまざまな災難に遭った時の心的な外傷体験を治療するというテーマで多少話し合っていたのだが、彼が言ったことが私の頭に残っている。
「年の暮れ、ギリギリまで診療所を開いていて、次々に私の診療所の前に列をなして、助けを求めてきていたのは、まさに戦闘疲労症候群の患者たちでしたよ」と。・・・
 第二次世界大戦北アフリカ戦線で陸軍司令官であったオマー・ブラッドレー将軍がある命令を出している。「戦場でのストレス性のブレークダウンに対する暫定診断としてはエグゾースチョン(消耗、困憊または尽瘁、という病名)とせよ、そして7日間の休養をまず取らせること」。

 限界を超えればどんな丈夫な人でもブレークダウンする。その中に自殺という選択をせざるを得ないところまで、追い込まれる人も当然出てくる。できもしない自殺予防に大騒ぎするより、超限界労働を止めさせろ。
 労働という戦線で疲弊しきって私の前に現れた人々に、抗うつ剤を処方はする。睡眠剤の処方もする。しかしながら、「あなたはうつ病ですよ。・・」とは滅多に言わない。「あなたは物凄くくたびれている。・・・まず寝てください」、とのみ言う。
 さらに言えば、「あなたは心の病気、精神の病気で精神科に来たということを、きっと恥じているに違いない。ここは確かに精神科の看板が掛かっているけれど、あなたの病気は、実はからだの病気ですよ」という説明をする。
 私がそこで語っている発想と、北アフリカアメリカ軍の将軍が考えたことというのは、どうもかなり近いのではないかな、という気がしてならない。】】
 ブッシュ、チェイニー、ラムズフェルトのトリオが起こしたイラク戦争について、バグダッド陥落までは見事な戦争だったが、その後の地上戦は日中戦争におけるゲリラ戦と同じ失敗。何故、このトリオがこうした失敗をしたかを、精神科医の立場から説明していますが、割愛します。
 まぁこんな話が次々語られている本でした。