バブルで損したのは納税者

以下、野口さんの本のハイライトです。

 バブルの総決算。
【「バブル崩壊で日本の富が失われた」というのは誤りである・・・損をした人がいる反面で、不動産や株を高く売った人がいることを忘れてはならない。】しかし・・・
【日本全体で見れば損得は帳消しになるからといって、問題がなかったわけではない。高値をつかんで損をしたのなら自業自得といえるが、意に反して(あるいは、知らないうちに)損失を押し付けられている場合があるからだ。
 最も明白なものは、金融機関に注入された公的資金・・・納税者が負担した。・・・
 納税者が負担したのは、これだけではない。
 金融庁の資料によると、全国銀行の不良債権処分損の1992年から06年までの累計は、96兆7828億円である。・・・
 ところで、銀行の会計処理でこれが損失とされることと、法人税において損金と認められこととは、別の問題である。バブル崩壊前に日本の税制では貸出先が破綻せずに存続している限りは、損金扱いを認めなかった。
 ところが、不良債権の処理を本格化させるために一定の条件の下で「貸出先が破綻していなくても損金扱いを認める(無税償却)」ことにした。
 不良債権処分損のうち、どれだけが無税償却だったのかは分からない・・・仮に全額が無税償却だったとすると、97兆円弱に実効税率(約40%)をかけた分だけ、銀行の税負担が減った。90年代以降、法人税収は激減したのだが、その大きな原因の一つは、ここにあった。】
 繰り返すが、不良債権の無税償却は、もともと認められている措置でなく、特例だ。だから、銀行に対する補助金とみなすことができる。
 公的資金による損失分とあわせれば、納税者の負担は、約49兆円にのぼったことになる。国民一人当たりでは約38.5万円、・・・
 「いまさらこんな計算をしても、何の足しにもならない」という人がいるかもしれない。確かに計算をしたところで、この負担を取り戻せるわけではない。
 しかし、われわれは、このことを決して忘れてはならないのである。なぜなら、われわれは、バブルの教訓を汲み取っておらず、日本の金融機関の基本的な体質は変わっていないからだ。】

バブルの損失額は、最終的に、銀行の不良債権になり、その4割は税金で面倒をみた、というのですが、残りの6割は、預金利率の引き下げで、預金者が負担したと私は思うのです。