グローバリゼーシヨンの波(1)アイルランド

野口悠紀雄さんの『資本開国論』(07年5月刊)を読んでいます。

 先日、太田経済担当大臣が「日本はもはや一流国ではない」と発言したそうです。
一人当たり国民所得が06年、18位に落ちたことを踏まえての発言でしょう

 どうしてこういうことになったか?

 たとえば、アイルランドアイルランドの国民一人当たりGDPは、06年度で51、421ドル、世界第5位です。13年前の93年、日本の一人当たりGDPは、1位(35、008ドル)だった。その時、アイルランドは14、234ドルで、19位でした。

野口さんはこう説明しています。

 【アイルランドも外国からの直接投資によって、目覚しい成長を遂げた。・・・工業化社会を飛び越えて「脱工業化社会」を実現したのである。

 アイルランドは1000社以上の外国企業が進出しており、アイルランド経済の大きな原動力となっている。その直接雇用が13万人、さらにそれ以上の人数が間接雇用されている。進出企業による直接雇用はGDPの4分の1を占め、その輸出高は全体の8割を超える。直接投資導入に成功した誘引として、法人税率の引き下げがあると言われている。03年からは、製造業・サービス業にかかわらず、税率は全業種一律に12.5%とされている。・・・

 300社以上の外国IT企業がアイルランドに進出しており、世界のIT企業の上位10社のうち7社がアイルランドに大規模な事業拠点を設けている。IBM,インテルヒューレット・パッカード、デル、マイクロソフトなどの企業はアイルランド国内で4万5千人を雇用している。これらの企業による03年度の輸出高は210億ユーロにのぼり、全輸出高の26%を占めている。同国は、世界最大のソフトウェア製品輸出国となった。

 1987年、アイルランド政府はダブリンに国際金融サービスセンター(IFSC)を設立した。これは、世界最大のオフショア金融サービスセンターであると言われる。・・・現在ダブリンでは、直接事業展開する450の国際金融機関と、IFSCプログラム下で運営されている700の管理事業体が営業を行っており、銀行業務、資金担保金融、リース、企業資金管理、ファンドマネジメント、投資管理、先物および株取引、国際保健業務などの広範囲な国際的取引サービスを提供し、世界に通用する金融中心地になっている。】

 経団連は、法人税の引き下げをたびたび主張し、実際、小泉内閣法人税を引き下げ、個人所得税は、定率減税の廃止など大幅な増税を行った。しかし、そもそも、法人税を下げようとする国は、それによって海外から企業を誘致し、雇用を増やそうとするのです。

 日本の経営者は、法人税を下げれば、雇用を増やすというのでしょうか。2000年以降、経営者のやってきたことは、正社員を非正規雇用に置き換えて人件費の削減を図ったことではなかったか?

 「国際競争力の強化のためには法人税の引き下げが必要だ」と主張する。しかし、野口さんは、この本の中でこう述べます。

法人税が日本企業の国際競争力をそいでいるわけではない。何故なら、企業の競争力は、「製品をどれだけの価格で販売できるか」によって測定できる。法人税は利益にかかる税であり、生産コストを形成する要因ではない。したがって、形式的に言えば、法人税が国際競争力に直接の影響を与えることはないのである。』

(続く)