「オフショアリング」

 次に、イギリスを例にとってみよう。

【05年におけるイギリスの一人当たりGDP(37310ドル)は、日本を上回る・・・イギリスが日本を抜いたことは、格別の意味を持っている。なぜなら、これまで一人当たりGDPで日本を上回っていたヨーロッパの国々は、人口規模の面では小国であり、日本と比較の対象になりにくい国だった・・・しかし、イギリスの人口は約六千万人だ。日本より少ないとはいえ、程度の差である。

 日本国内では、「いざなぎ景気を抜いた」ことがニュースになっている。しかし、イギリスにおける景気拡大は、なんと15年目に突入しているのである!】

 イギリスやアイルランドの事例に共通するのは、『新しいタイプのグローバリゼーシヨンの波に乗った』ということです。
【90年代以降、新しいタイプのグローバリゼーシヨンが世界に広がっている。それは、「オフショアリング」と「先進国間の直接投資」だ。日本は製造業の製品を海外に輸出するというタイプのグローバリゼシヨンには強いが、新しいタイプのグローバリゼーシヨンには追いつけない。

 オフショアリングとは、企業がそれまで組織内で行っていた業務の一部を、海外に委託するもの・・・これを可能にしたのは、通信コストの劇的な低下だ。

 オフショアリングは次の分野でとくに顕著に見られる。

コールセンター:アメリカの企業が、80年代からコールセンターをアイルランドに置き、ここからヨーロッパ大陸の顧客に対するサービスを行った。
 最近では、インドの躍進が目覚しい。アメリカの企業の多くは、コールセンターをインドに移した。いまでは、アメリカ国内向けの電話サービスも、インドのオペレータによって行われている。

バックオフィス業務:データ入力やデータ処理、或は給与計算などのルーチン的バックオフィス業務だ。欧米の多くの企業が、こうした業務をアイルランド、インド、シンガポール、オーストラリヤなどに移している。

ソフトウェア開発:この分野では、インド、ロシヤ、ブルガリヤなどの成長が目覚しい。

専門業務:最近の傾向として、税務、会計、法律関係などの専門サービスを、オフショアリングする動きが広まっている。法律では特許関係の仕事が中心だ。ここでもインドの躍進が目覚しい。インドの法律家は英語の点で問題がない・・

 オフショアリングは、仕事の受け手国に大きな利益と発展のチャンスを与える。・・・

 最初にこの影響を受けたのは、アイルランドだ。・・・いまやアイルランドは、地球規模でITビジネスのハブ(中枢)に成長しつつある。

 最近ではインドの発展が目覚しい。経済成長率は1994年以降平均7%程度に及ぶ。・・・ソフトウェア産業は、日本やヨーロッパ諸国を抜いてアメリカに次ぐ第二位だ。】
(続く)