憲法9条の思想水脈

憲法9条の思想水脈』(山室信一著、07年6月刊、朝日新聞)を東区図書館の開架で見つけ、借りてきました。

 昨年の司馬遼太郎賞受賞作品だそうです。

題名から、9条の非戦の思想の依って来る由縁を解説した本、とは推定できましたが、幕末の儒学者横井小楠から説き起こしているのには驚きました。

勝海舟の『氷川清話』には、「俺は今までに天下で恐ろしい者を二人見た。それは、横井小楠西郷隆盛だ」との海舟の言葉を紹介しています。

 そして、終章にはこんな記述がありました。

『占領下における憲法改正という事態については、すべて連合国軍総司令部GHQ)の自由裁量で行われたという誤解がされやすい。しかし、連合国軍総司令部そしてマッカーサーは、けっして何らの制約を受けない超越的な存在だったわけではない。その占領は法令的に、二つの規定から外れることは許されなかった。

 その第一はハーグ「陸戦の法規慣例に関する規則」であり、その第43条では「国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的な支障なき限り、占領地の現行法律を尊重して、成るべく公共の秩序及び生活を回復確保する為なし得べき一切の手段を尽くすべし」と定められており、それに違反することは連合国軍総司令部も避けていた。そして、第二にボツダム宣言第12項の「日本国国民の自由に表明せる意思」に従うという規定であり、憲法改正についてもそれに適合しているかどうかは重要な判断基準とされた。』

 押し付けられるいわれのない憲法を押し付けられるほど、われわれの先輩は腰抜けではなかったと、私も信じたい。

「あとがき」には、

『2007年5月 国民投票法が成立した月に、次代の日本を想いつつ』とありました。

かなり評判になった本だから、誰かが書評を書いているだろうと、Google検索してみたら、実に詳細な紹介が見つかりました。

 どんな本か興味をお持ちでしたら、詳細は、以下をご覧ください。

http://d.hatena.ne.jp/loisil-space/20070628/p2