『閉塞経済』(金子勝著、ちくま新書、08年7月刊)

を読みました。
【「金融資本主義」の時代を分析するために、どのような経済学が必要なのか―――この本は、この問いに対する私のささやかな考えを書いたものです。】という前書きから始まります。【 】内は同書からの引用
バブル発生、崩壊の原因
【普通の経済学の考え方では、資金の移動の自由化、つまり為替も金融も自由化していけば、資金配分の効率性が高まるはずです。「市場は万能の神」ですから。ところが、その根本テーゼそのものが、バブルとバブルの崩壊を作り出す元凶になってしまっているのです。】
グローバル化した経済のもとでは、バブル崩壊は連鎖的な作用を他国にもたらすので、各国の金融当局が協調して金融緩和をするようになります。そうすると、バブル崩壊による資産価格の下落は終わりますが、みんなが金融緩和をするわけなので、過剰流動性つまりカネ余り状態が再び作られ、そのお金はまた次のバブルを狙っていくという悪循環が繰り返されることになります。】
 先日、日銀総裁が記者会見で「流動性が枯渇した」と言っていました。上記の記述と矛盾するようですが、銀行間の短期金融市場が相互不信で資金の出し手がいなくなると、一挙に流動性不足に陥るのでしょう。
【この間分かってきたのは、財政政策だけでなく、金融政策も長期では効果がないということです。たしかに金融政策は短期では効きます。また流動性の供給によって、当面、金融機関の倒産を避けることはできるし、場合によっては資産価格を押し上げる効果もあります。しかし、マネーがあふれてしまうので、結局、長期では絶えずバルブを作り出すことに行き着いてしまいます。金融緩和をずっと続けていくと、バブルとバブル崩壊を繰り返す病に襲われてしまうのです。】
 もう一つ、グローバルスタンダードの補足して。
バブルとバブルの間を泳ぎぬけたグリーンスパン
FRBのFFレート(政策金利)の動きを見ると、フローの実態経済を念頭に置いた金利政策とはまったく違う動きをするようになっています。バブルがひどくなると引き締めのためにジリジリ金利を上げて、バブルが崩壊すると素早く何度も金利を下げていくという金利政策がとられています。政策金利が、ストックの資産価格とともに動いていく、極めて変則的な金融政策で、経済学のテキストには載っていないものです。】
【結局、グリーンスパンの「功績」は何だったのかというと、バブルをコントロールすることによって次々とバブルを乗り換えていったことです。】
【かつてアメリカは、日本のバブル崩壊後に金融機関を破綻させずに、不良債権処理を先送りしているのはけしからんと言ってきました。結局、アメリカは日本、韓国をはじめ多くの国々でそう主張して、相手国の破綻させた金融機関を安値で買い取ってきました。しかし、いまアメリカは猛烈なモラルハザードを引き起こしてでも、大手金融機関をつぶそうとしていません。「グローバルスタンダード」など、所詮そういうものです。】
(「バブル対策の記述も面白いのですが後日)