男と女のお話

「男と女のお話」というのは、日吉ミミの演歌だが、「できそこないの男たち」(福岡伸一著、光文社新書)を読んで、この書は「男と女のお話」という題にすればもっと売れるのでは?と思いました。とても興味深いので、少し長くなりますが、以下、紹介します。

「アリマキ的人生」という章がありました。アリマキってご存知ですか?

【アリマキ、という小さな虫の生活を見ると、私たちのはるか祖先が性をどのように扱っていたのか手にとるようにわかる。そして男とはどのようなものであるのかも。】

【アリマキたちの唯一の食べ物は植物の汁である。アリマキたちはその小さな顔に不釣合いな、長い、先のとがったストローのような口吻をもっている。これを植物の茎に突き刺して、中の甘い汁を吸う。】

つまり、植物にとっては、人間に対する蚊のような、生き物らしい。

【アリマキは一方で貪欲に蜜を吸いながら、吸収し切れなかった甘い蜜(植物の汁)を透明な雫の玉としてお尻から出す。これを求めて蟻たちが足しげくアリマキが集まっている場所に訪れる(アリマキの名の所以です)。蟻たちは、甘露を頂く一方で、しばしば、アリマキそのものを餌にしようとする他の昆虫(テントウムシなど)を追い払い・・】

【アリマキはすさまじい繁殖力によって、爆発的に増え、世代は連綿と前進し続けている・・・アリマキの繁殖力はひとえに、アリマキの世界が基本的にメスだけでなりたっていることによる。

 メスのアリマキは誰の助けも借りずに子どもを産む。子どもはすべてメスであり、やがて成長し、また誰の助けも借りずに娘を産む。・・メスだけで世代を紡ぐ。しかも彼女たちは卵でではなく、子どもを子どもとして産む。哺乳類と同じように子どもは母の胎内で大きくなる。ただし哺乳類と違って交尾と受精を必要としない。母が持つ卵母細胞から子どもは、自発的・自動的に作られる(母、子、孫すべてクローンです)。】

 【私たち有性生物は、パートナーを見つけるため、常々右往左往し、他人が見たら馬鹿げた喜劇としか思われようのない徒労に満ちた行為を、散々繰り返してようやく交接に至る。首尾よく成功したとしてもそこで受精が成立する可能性はそれほど高くない。その後生まれた卵あるいは、子どもを保護し、生殖年齢まで育て上げるためには驚くべき時間とコストがかかる。】

【アリマキたちにはこの一切がないのだ。】

【ところが、アリマキたちには、この優れて効率の良い自分たちの生活のしくみを変えるときが来る。1年に1度だけ。】

【秋も深まった(冬が近づく)ある日、アリマキは、これまでと違うやり方で子どもを作ることにする。あるスウィッチを入れて、自分たちのプログラムの基本仕様に分岐路を作る。・・基本仕様から外れて特別なカスタマイズ・・・オスのアリマキが産み出される。

 アリマキはどのようにしてオスを作り出すのだろうか。それはヒトの場合と原理的には同じ方法である。というよりも、むしろヒトがアリマキの方法を踏襲した。つまり、メスを変えてオスを作る。】

 だんだん「男とおんなのお話」に近づきます。(続く)