走る意味

『走る意味』(金哲彦著、10年2月刊、講談社現代新書)。読みました。この本を読もうと考えたのは、「走る意味」と副題の「命を救うランニング」という言葉に惹かれたからです。
 著者は、TVのマラソン解説などに良く登場しますから、ご存知の方も多いと思います。1964年、北九州市生まれ、早稲田大学では、1年から4年まで、箱根駅伝5区の「山登り」を走り、区間賞2度。卒業後、リクルート入社。「リクルートランニングクラブ」設立。92年ボルダーで有森裕子(この年バルセロナ・オリンピック銀メダル)をコーチ。この後、現役引退し女子のコーチ就任。95年、監督に。同年、高橋尚子が入社。01年、リクルート休部。02年、NPO法人「ニッポンランナーズ」設立。という経歴です。

 この著者が突然42歳で、がんに倒れる。
2006年、大腸がんを手術。翌年の7月、ゴールドコーストラソンを5時間42分で完走。09年11月には、つくばマラソンを2時間56分10秒で完走するまでの、闘病と体力回復の歩みを記録した本でした。
「命を救うランニング」は、この闘病記の意味でした。
全体として著者の半生記といった内容ですが、早稲田での中村清監督や、先輩の瀬古利彦氏との交流のエピソードが、ランニングの好きな人には面白い。

金さんの語る「走る意味」、
『競技選手であったときは、上だけを目指してただ勝つために走ってきました。
しかし、ガン手術の後、ゴールドコーストでマラソンを完走することができたとき、それまでとは異なった深い気持ちを持ちました。走ることが、生きているということを実感させてくれるのです。一度死を覚悟した私が、まだ生きている。手術の痛みに苦しむのでなく、死の恐怖に怯えるのでなく、本当に自分が生きているということを走ることから感じ取ることができました。』

市民ランナーについて、
『市民ランナーにとって、大阪国際女子マラソンに出ることだけですごいことですが・・・その人の話を聞いてもうひとつ驚いたことがありました。それは仕事をしながら記録を目指してマラソンをやるということの努力のすごさです。平日などは時間を一生懸命作って、女性でも夜中の12時過ぎまで走ることがある、実業団の選手ではありえないことです。すごい努力をしていることは話を少し聞いただけで分かりました。普通の仕事をしながらマラソンを3時間ちょっとで走るというのは、実業団の選手にも負けないぐらいの努力をしている。』
以上のような本です。ジョギング愛好者にはお勧めできますが・・・