続・変わる世界、立ち遅れる日本

【09年夏に(世界の)景気が回復すると、・・・景気後退から真っ先に抜け出した富める国は、製造業大国である日本とドイツ、それにフランスだった。これらの国は、アメリカより3ヶ月、イギリスより6ヶ月も早く回復したのである。

 しかし、(今後、日本が製造業主体でやっていけるというわけではない)

製造業とサービス業を短期的に比較することはまったく無意味である。景気循環による当然の結果と、富や生活水準を向上させる真の根源を混同しているからである。】

 (氏は、09年の製造業の回復は(在庫変動による)景気循環であって、長期的に製造業主体でやっていける証左にはならないと説く。

09年日本の輸出関連製造業は景気回復していた。しかし、日本の一部しか景気回復の恩恵に浴していない。)

【製造業は、輸出急増で最も恩恵を受けている分野であるが、日本のGDPの約2割を占めているに過ぎない。それに対し、サービス業はその約7割を占めている。したがって、サービス業の自由化や改革に、それに活性化に失敗すれば、経済活動に大きな影響を与える。】

 (つまり、市場の自由化により、サービス業の活性化に成功していれば、今日の日本の苦境は避けられたと、氏は主張するのです。

 ここのところ、氏はこう説明している。)

【(日本の)サービス業は、国際競争にさらされていない。国外からサービスを輸入するか、あるいは、海外のサービス企業からの直接投資によって競争すべきだが、この分野ではそれが見られない。】

要するに、グローバル化以前は、日本は2割の製造業の稼ぎが国民全体に行き渡り、食べていけた。しかし、グローバル化の今日、製造業の稼ぎが国内だけに波及するわけではない。7割のサービス業も稼がないと、豊かな国でありつづけることは出来ない、とエモットさんは言うのです。

長くなりますので、この本の最後に跳びます。筆者は資本主義の将来について、二つの大変革が起こると述べる。

一つは、不平等に関する政治的関心の高まり(による変革)である。

鳩山由紀夫氏の、日本における「市場原理主義」への批判は、実際は不平等に対する非難だった。つまり、橋本及び小泉政権下で労働法が緩和された結果、不平等が助長され、二層の労働市場が生じたのだ。民主党政権が、公共支出を貧困者への援助へと転じ、労働法を改正すると公約しているのは、不平等への政治的不満が高まっていることに対応するためである。】

 もう一つは、資本主義システムの不安定性を解消する、金融規制が新たに設定されることだ。(筆者の意見でなく、私見ですが、この金融規制は例えばトービン税のような、国際間流動性を制限するものになると思う。)

 これらの変革に、二つの変化が大きな影響を与える。

中国通貨の切り上げと環境問題である。