世界を知る力(2)

【アジヤはどうか。たとえば、東アジヤにおける域内貿易比率をみると、20年前には3割程度だったのが、10年前には4割に、そして現在は5割に達しようという現実がある。かつて市場の最終目的地をアメリカに定めていたアジヤ経済が、いまや相互に活発な貿易を交わすほどネットワーク型の相関の中で成長してきた証である。(アメリカ一極集中でなく)分散型ネットワーク社会への移行は、アジヤ経済において既に起こり始めている。
 分散型ネットワークの時代に照準をあわせる。そこに日本の歩むべき道がある。】

分散型といえば、エネルギーの分散型ネットワークについても考えてみよう。
【世界の自動車メーカーは、ハイブリッドであれ燃料電池であれ、大きな流れとしては電気自動車へ進路をとろうととしている。ここが70年代との決定的な違いである。
電気自動車に電源を供給する仕組みとして、再生可能エネルギーの可能性が浮かび上がってくるのである。無論、従来型の基幹系統電力が電気自動車時代も主力となることは変わらないだろう。しかし、「小規模・分散型」という再生エネルギーの“アキレス腱”は、いたるところを走り回る自動車への電力供給を考えた場合は、むしろ強みに転化することさえできるのではないだろうか。
さらに、「スマートグリッド」(次世代双方向送信繊網)のように、小規模・分散型の電源をきめ細かくネットワークでつなぐことによって、高効率の電力供給を可能にする研究開発も進められている。要は、太陽光発電風力発電によって各家庭や地域でチマチマと発電された電気を、余ったところから必要なところへきめ細かく融通し合えるようにする仕組みである。何かに似ていないだろうか。そう、インターネットである。実際、アメリカのスマートグリッド計画には、あのグーグル社が「グーグルパワーメーター」といわれる電力の最適な需給管理をするシステムの開発役として参入している。
70年代には弱みにすぎなかった再生可能エネルギーの「小規模・分散型」という特徴がいま、電気自動車やITと連動することで、新たな、そして画期的な意味を持ち始めようとしているのだ。】
 最後に(今ワダウに)基地問題について
 【第二次世界大戦で連合国に敗れたドイツは、冷戦終結後、1993年に在独米軍基地の縮小と地位協定改定を実行している。しかも、日本は現在も、米軍駐留コストの7割を負担している。こんな例は世界にない。
 アメリカが日本や韓国に軍事基地を持ちつづける根拠は、北朝鮮の南進に対して即座に対応できる「前方展開兵力」を確保する必要があるからだ、ということになっている。
しかし、戦略情報戦争時代といわれる今日、兵力そのものを前線に貼り付け続ける意味が、それほどあるとは思えない。
 したがって、東アジヤの安定のための米軍基地を、沖縄・朝鮮半島からハワイ・グアムに移転させるという案は、十二分に検討に値する。】