さらば外務省!

 天木直人さん、面白い人だ、著書を読んでみようと、図書館で検索したら『さらば外務省!』(講談社、03年10月刊)が見つかりました。

 早速読んでみたのですが、次から次へと外務省高級官僚の堕落振りが紹介されていました。

 外務省のスキャンダルといえば、7〜8年前松尾某の「官房機密費詐取事件」(*)というのがありました。ご記憶でしょうか。著者によると、これは氷山の一角だという。

 不正経理問題だけでなく、著者によれば、外務省はなすべき仕事をしていないと、数々の事例を紹介しています。あまり沢山あるので、内容総てを紹介できませんが、一つだけ、最近話題の沖縄基地問題についての記述を以下に。

デトロイトで連続婦女暴行殺人事件が発生した。それを伝えるデトロイトが、日本との関係に言及した。「容疑者はデトロイト周辺のナイトクラブに頻繁に出入りし、知り合った売春婦を次々と殺していったのだが、その男はかつて海兵隊に所属し空母ニミッツで日本にも寄港した。日本でも売春婦を殺したことを捜査員にしゃべった。」

(当時デトロイト総領事だった著者は)直ちに外務省に報告した。外務省の回答は、

警察庁の犯罪記録にはそれらしい事件はなかった。在日米軍の犯した犯罪については、在日米軍の協力なくしては個々の犯罪のすべてを知り得る立場にはなく、従って本件についても調べようがない」

『88年以降の統計で、米軍の犯罪件数でワースト1なのは169件の犯罪が記録された沖縄の米軍基地であり、沖縄の倍の数の海兵隊員がいるサンデイエゴ基地でさえ102件しか犯罪が起きていないこと、欧米などの米軍基地での犯罪件数は軍を抜いて多い・・・』

 このデトロイト紙の報道を質された日本の国会では「米軍の犯罪で防衛庁が知っているのは、損害賠償の請求が被害者からある場合だけで、それによると、88年から今日までに3件の事案があった」(防衛施設庁長官)

「米国の地方紙の数字だけを信用して議論はできない」(青木官房長官

 日本の国民が、在日米軍による犯罪の被害にいかにさらされてきたかという重要な問題について、外務省、防衛庁警察庁の関心は極度に低い。』

 まぁ、こんな内容が一杯の本でした。

この本を読んで感じたことが二つ。

この書の記述がすべて正しいかどうかは、私には知りうべくもありませんが、こうした本が刊行された以上、国会で著者及び関係者の証人尋問をすべきではないのか?

もう一つは、この書では、外務省エリート官僚の劣化を詳細に述べているが、高級官僚の劣化は、外務省に留まらないのではないか?

消えた年金記録」は厚生省官僚の劣化を物語る(歴代の社会保険庁長官の誰一人責任を取ろうとしない)。

検事のデータ改ざん事件は、検察官僚の劣化を物語る?

(*) 外務省の要人外国訪問支援室長が、首相の外国訪問の際に宿泊費を97年から99年の3年間で14度にわたって約5億円の水増し請求をした。