ミトコンドリア

 TVを見たら、爆笑問題が、ミトコンドリアを論じていました。ミトコンドリアとは、人間の細胞の中に沢山あって、酸素からエネルギーを作り出しているものです。

 先日の九州旅行の新幹線で、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(前野隆司著、ちくま文庫、10年11月刊)という本を読みました。その中の「からだのどこまでが自分なの」という章があり、ミトコンドリアを論じていたのです。

ミトコンドリアは、私たちの真核細胞内にある長さ2マイクロメーターほどの小さな組織だ。独自のDNAを持っていて、細胞内で分裂したり増殖したり、まるで細胞内の細胞のように振舞う。ミトコンドリアは、酸素を利用して細胞に必要なATP(アデノ3燐酸)という物質を作り出してくれるので、私たち人間はミトコンドリアなしでは生きていけない。このミトコンドリアは、なんと、数十億年前に実際に独立した細菌だったものが、生物の細胞に入り込み共生を始めたものだといわれている。ミトコンドリアの祖先であるその細菌は、現在のその機能と同じく、酸素を使ってエネルギーを作り出していたらしい。

 ということは、ミトコンドリアは、人の「自分」の一部だが、昔はそうではなかったといえそうだ。壮大な話だ。今の人類にとっては「自分」の一部だが、昔の生物(人類の昔も)にとっては他人だったなんて」と述べています。つまり、ミトコンドリアは人間の細胞の中の生き物で、細胞の中でせっせとエネルギーの元になるATPを作っている。彼らが働かないと、人間はエネルギーがなくなって生きることが不可能です。人間にとって、ミトコンドリアは「自分」か「自分」でないのか、という問題提起です。

 別の箇所で、著者はこう述べています。

大腸菌は、人間の消化を助け、ビタミン類を合成して人間を助ける、消化管内共生菌だ。人間にとって大腸菌は「自分」の一部だと考えていいように思える。

では、胃の中の食べ物は自分だろうか?物体として考えると、消化されている最中は「自分」ではなく、消化されて吸収される瞬間に自分になるのかもしれない。しかし、現象として考えると、消化は不連続な変化ではない。つまり、胃の中のものは少しづつ消化されていくから、食べ物は徐々に「自分」なっていく」

「自分」とはかくもあいまいなもの、と著者は論ずるのですが、「ミトコンドリア」はこういう面白い存在です。その奇妙な存在が、(持久性運動で筋細胞内のミトコンドリアは増加して)われわれの「若さ」まで支配するというのですから。

この話題長くなりますので、今回はここまで。次の機会にまた取り上げます。

追伸:この文庫本、小さな本(249P)ですが、面白い話題が一杯でした。小さな本の割りに値段も¥760+税といい値段でした。