クラウドの未来

クラウドの未来』(小池良次著、12年1月刊、講談社新書)を大学図書館の新着本の棚にみつけました。
 著者はサンフランシスコ郊外に在住。米国に居て実感ずる「未来のクラウド」を論じています。
 私は「クラウド」について、個人的なデータを、プロバイダのコンピュータに保管することで、場所を変えてもネットに接続さえすれば、コンピュータ作業が出来ることと考えていましたが、筆者は、そんなことにとどまらず、ビジネスのモデルが代わると力説していました。
 【アマゾンは、06年にクラウド・ストレージサービスから初め、その後、本格的なパブリック・クラウドのアマゾンEC2を開始した。電子小売業のアマゾンが、なぜクラウドに一番乗りしたのでしょうか。・・・アマゾンは世界最大の電子小売店として、独自の情報処理センターを持っていますが、それはクリスマス時期のピーク時に合わせた巨大なシステムです。クリスマス時期以外は、システムに膨大な余裕があります。その余力を、他社にレンタルして日銭を稼ごうとしました。これがアマゾンのクラウドだった。
11年3月29日、米国アマゾンは「クラウド・ドライブ」を発表しました。当時、アマゾンのホームページでは「ノートブックや携帯電話に音楽をダウンロードする必要はもうありません。好きな音楽をアマゾンに保管しておけば、いつでも、どこでも聴くことができます」とのメッセージが飛び出しました。
 米国では、音楽プレーヤーやビデオ・レコーダー、ワイファイ機器など、さまざまな端末デイバイスクラウドへとその機能を移しています。これはクラウドがコンピュータ分野から一般家電へと広がっているためで、それによりハード・ソフトの一体化を基本とするデイバイス設計のあり方が変わろうとしているのです。
 かつて大型コンピュータでは、ソフトとハードを一体化して、サービスを提供していました。しかしOSが登場するとハードとソフトが分離しました。同じOSであればハードウェアの種類を問わない世界が出現しました。
 クラウドは、これと同じ状況を作り出そうとしています。・・・超集中と超分散が同時に進むクラウド・ビジネスモデルの宿命でもあります。高度な管理機能や大容量コンテンツの取り扱いはデータ・センターに超集中し、超分散するデイバイスは操作性や表示機能だけに徹する。そんなハード商品が、今後は普及していくでしょう。
 あと数年もすれば、企業システムにおいても、家電においても、ハードトソフトの分離が進みます。これまで日本や韓国が得意としていたハード・ソフト一体設計が、アマゾンやグーグル、マイクロソフトなど米国のクラウド事業者によって侵食されることを意味します。
 その意味で、クラウド(現象)は、ハードメーカーへの新たな挑戦状です。】
 ソニーのストリンガー社長が、狙ったことはこれであったか!ストリンガー氏の夢は、ソニーを端末のデイバイスメーカーからコンテンツとネットワーク事業を含む広い意味のエンターテインメント企業に変貌させることだった。
しかし、ソニーは、ネットとクラウドの時代への適応に、現時点で成功していない。