『震災復興 欺瞞の構図』

 原田泰さんの新刊を本屋の棚に見つけました。
『震災復興 欺瞞の構図』(新潮新書、12年3月刊)です。

「欺瞞の構図」って?まずは序論(前書き)を見ていきます。
【東日本の復興のためには19~23兆円の予算が必要で、それを賄う10.5兆円の増税が必要だと政府は考え、そのための復興財源法を成立させている。】
 しかし、本当に増税が必要だったのか?
【私は、東日本大震災で毀損された物的資産は、公的資産と民間資産をあわせて、せいぜい6兆円なのだから、山を削って高台を造ったり、割高な自然エネルギーを使うエコタウンを造ったりしなければ、復興増税は必要ないと、非力ながら、一人でキャンペーンを行ってきた。キャンペーンの最中に、私の6兆円しか壊れていないという指摘に、賛同して下さる方は多かったが、反論される方はいなかった。・・・政府が震災による毀損額を課題に見積もるのは、復興とは別の魂胆があるからだ。事業官庁としては、これを機に多くの予算を獲得したい、財務省としては、これを利用して増税をしたいのだ。しかし、壊れた物的資産が6兆円なら、民間資産を含め、政府がすべて元に戻しても、復興予算は6兆円で済む。復興予算が6兆円で済むなら、到底増税ということにはならない。】
【すでに被災地のメインの道路や鉄道は修復され、大きな工場は動いている。後は、住宅と中小企業と漁港と漁船と魚の加工場を立て直すだけだ。費用の半分を補助するなら、あと2兆円もあれば足りるだろう。だから復興増税は必要ない。】

 第1章では、内閣府東日本大震災で16.9兆円の物的資産が破壊されたとしているが、そもそもそんなに壊れているはずがないことを説明している。
 第2章で、過去の震災復興費の浪費ぶりを説明している。日本人一人当たりが持っている物的資産は966万円に過ぎないのに、阪神淡路大震災では、被害者一人当たり4000万円が使われた(今回は4600万円使うらしい)。
 第3章で、政府や地方自治体は、この巨額の復興予算を何に使おうとしているのかを見る。一言で言えば震災復興に関係のない、効果の明らかでないことに税金を使おうとしている。
 第4章で政府や地方自治体が行おうとする復興策に対抗して、被災した人々のためになる、安価で効果的な復興策を提言している。それは巨額の公共事業ではなく、何よりも人々を直接助ける復興策である、というのだ。
 お役人がお金の使い方を決めるよりも、被災した人に直接お金を支給して自分たちで使い道を考えてもらうのが最も無駄が少ない。ところがお役人はそう考えない。お金の使い方は、東大法学部の難しい試験を経て優秀さを証明された官僚が決めるのが一番良い。お役人がお金の使い方を決めるということは、すなわち税金を沢山集めることを意味します。
 しかし、その結果は、この本の第2、3章で述べられているような無駄の発生です。
 私の解釈によれば、官僚の権力の源泉は「予算配分権にある。年金・医療等社会保障費の自然増によって、官僚の配分できる予算額は年々限りなくゼロに近づく。それは、官僚の権限が年々縮小されることを意味する。それが彼らは我慢できない。だから、機会あるごとに増税をねらう。復興のための期間限定の増税といっても、25年という期間は、25年後多分生きていない人たちにとっては、永久増税です。
  5章で、過去の震災復旧対策からの教訓。第6章で、原子力災害の教訓を述べている。
【必要なのは、原子力自然エネルギー固執することでも、クーラーを消して我慢することでもなくて、様々なアイデアと技術を持った人々が電力業に自由に参入できるようにすることではないだろうか。】
 筆者は、自由な個人のアイデアの集積が、官僚の計画に勝ると主張する。震災復興事業にもそれが言える。
まぁ、こういう内容の本です。